シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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医療崩壊がおこるということはどういうことなのか?

カリフォルニアは全体的に非常に悪い状況ではあるが、北の方は少しマシで、南の方は最悪の状態だ。中部から南カリフォルニアはすでに ICU の残りベッド数はゼロの状態が数日続いている。ロスでは病院から溢れる患者を収容するための野外病棟のテントが設立されて、必要になれば使えるように準備中だ。

しかし、この日記でも何度も書いていることだけれど、根本的に足りないのはベッド数では無い。患者をケアする人員だ。このまま勢いが止まらず、春のニューヨークのような状態になった場合、本来なら5人の患者に1人看護師がつくべきところを20人の患者に1人看護師がつくようになり、ベンチレータに20年以上触ったことのない医師がベンチレータの管理を任されるようになる。その時間は迫っているとロサンゼルスの医療関係者がコメントしていた。

そのような状況になると、医療体制は「すべての人を救おうとする」という目標を「助かる可能性のある人を救う」という目標に置き換えざる得なくなる。つまり、医療関係者は患者の容態をみて、助かる助からないという気が滅入る取捨選択をしなくてはならなくなるということだ。そして、助からないとランク付けされた患者は、本来なら受け取れるはずだった看護を受け取れなくなることになる。その判断を任されるのは、ただですら激務で働いている医療関係者にとって、想像しがたい精神的負担になることは明らかだ。今はまだ、そのレベルの医療崩壊は来ていない。しかし、このまま収まらなければ、その状態は数週間でやって来るといわれている。

現時点においても ICU の看護師の現状は悲惨だ。動きにくく熱を逃してくれないPPEを着て12時間のシフト中、汗だくになりながら部屋から部屋へ走り回っている。にもかかわらず、たくさんの患者は助からず、息ができず、口からいれたチューブのために会話もできず、苦しみながら目の前で亡くなっていく。そういう状況に何日もいると、自分のやっていることがまったく役に立っていないという錯覚にとらわれるそうだ。出勤前に今日、自分の患者が死なないようにと祈り続ける看護師もいる。治癒する治療法がない状態の患者に対して、最後に彼らができることは祈ることだけなのだ。

この環境にたえられず辞めていく看護師が後をたたない。ただでさえ、人員が不足しているところに、さらに肉体的にも精神的にも限界を迎えた看護師たちが病院を辞めていく。残された看護師たちは、辞めていく看護師のことを理解しつつも、自分たちの環境がさらに厳しくなったことに肩を落とす。そして、また別の看護師が辞めてしまうのだ。

辞めてしまうだけではない。患者と接近して作業に当たる彼らは、最も感染リスクの高い人達だ。どんなに注意していても感染力の高いウィルスを前にして医療関係者にも感染が広がり、先週1週間で医療関係者の感染者は25%も増えている状態だ。これが原因で更に人員が減少してしまう。

このような絶望的ともいえる状況で、一人でも多くの患者を救おうと歯を食いしばっている医療関係者のことを考えず、巷にはクリスマスショッピングに出かける人やパーティに出かける人や旅行に出かける人たちがいる。そういう人が出かけた先で感染して病院のベッドを溢れさせるというのだから、医療関係者たちは本当にやりきれないだろう。

子どもたちはクリスマスになにもできなくてかわいそうだとか、欲しい物を与えられなかったらかわいそうだとか、そういうレベルの話をしている人は視界が狭すぎる。本当にかわいそうなのは、チューブに繋がれて話すことすらできず、家族にひと目会うこともできないまま亡くなっていく人や、彼らを救うために身を粉にして働いているのに叶わず、患者の死を受け止めなくてはならない医療関係者や、家族を見送ることができずにその死を受け入れない家族だ。

そういう医療関係者たちが、感染を食い止めるためにできるだけ家にいてくださいと頼んでいるのだ。ならば、それ以外はなにもできない私達は、せめて頼まれたことぐらいやるべきだと思う。そして、それがどんなに大切なことなのか子供に教えるべきだと思う。そうやって家族で家にいればいい。ただそれだけだ。

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