シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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一番足りないのは人

カリフォルニアの感染拡大の勢いは相変わらずだ。毎日新規感染者数や入院者数や死亡者数を見るのが憂鬱だ。

米国の一日あたりの新規感染者数は20万人超え、死亡者数は2500人超えという状態で、米国の累計死亡者数は30万人を超えている。死亡者数が3000人を超えた日もあるが、その時にニュースが1日あたりに亡くなった人数が、911のテロで亡くなった人数を超えたと表現した時はズシッと来るものがあった。あのときの死者数はものすごかったのに、あれと同じだけ、またはちょっと少ない状態の死者数が毎日のように連続しているという情報は、いかにすごい勢いで人が死んでいるかを具体性をもって示してくれる。

カリフォルニアのICUベッド数がどんどん少なくなっていることは既に日記に書いたが、実はカリフォルニアで現在一番足りないのは医療スタッフだということが今日のニュースに書いてあった。カリフォルニアはたくさんの臨時医療施設にできる場所を用意していたので、なんでそういう場所をオープンしないのかなあと思っていたのだが、実はベッドを増やしても、ベンチレータを増やしても、それを管理して患者を助ける人がいなければ意味がないからなのだ。

実際には、臨時医療施設は徐々にオープンし始めているらしいが、とにかく医療スタッフが足りない。他州からスタッフを借りてこようにも他州も同じような状態か、またはカリフォルニアよりも悪い状態だったりする。

それにしても不思議なのは、このような状態に備えて、カリフォルニア州政府は医療スタッフ派遣会社と大型契約をしてあったし、引退したり訓練中の医療スタッフを給与付きボランティアとして募っていたはずだ。あれはいったいどうなったのかと思ってちょっといろいろ読んでみた。

まず、医療スタッフ派遣会社についてだが、このような会社は通常米国全土を網羅して営業をしているため、他州にもスタッフを派遣している。今のように米国内がどこもかしこも一斉に感染拡大し、医療スタッフが足りなくなるというシナリオはなかったらしく、彼らのスタッフも圧倒的に足りない。米国全土に広く薄く派遣するしかない状態らしい。

それでは、給料付ボランティアに関してはどうだろう。このプログラム、何万人もの申込みがあったものの実働可能なのは1万人にみたないらしいが、1万人でも相当な数だ。しかし、今、このボランティアの名簿から働いているのは21人しかいないという。なぜ、そんなことになっているのかはニュースでは詳しくは語られていない。ただ、現在のところ、ボランティアを最適な配分を検討しているところだという微妙なコメントが書いてあった。もう少しニュースを追う必要がありそうだ。なるべく早く彼らの力を使える環境になってほしい。

ただどちらにせよ、この感染が収まらなければスタッフは足りなくなる。現在、州政府は海外から医療スタッフを雇うことも検討中だ。このパンデミックの中、海外から働きに来てくれる医療スタッフがいるかどうかはよくわからない。

医療スタッフといえば、10日ほど前に「ファウチ効果」という言葉を知った。もちろん、我らがファウチ博士と関係がある。

このパンデミックを通して、たくさんの若者がメディカルの進路を選択しようと考えるようになったらしく、メディカルスクールの人気が非常に高くなっている。これは、パンデミックの中、専門知識と使命を持って活躍しているたくさんの医療従事者たちの姿をみて、ああいう大人になりたいと考える若者たちが増え、進路選択の傾向に影響しているからだと言われている。これを、医療従事者を代表して「ファウチ効果」と呼んでいるらしい。

わかるなあ。ファウチ博士は79歳だというのに、本当にかっこいい。79歳にしてあのように生きることができるなら、自分の人生に誇りを持って終えることができるだろうなと、私が思うのだから、もっと可能性と未来がある若者がそういうふうに感じるのは当然のような気がする。

と、話がそれてしまったが、とにかく今のカリフォルニアは医療従事者が足りない状況が発生し、さらに深刻になる可能性がある。これは、なにがなんでも病院に行くようなことはしでかさないほうがいいなと再び肝に命じる。

それにしても。この感染拡大が一向に収まらないのは、まだ規制が強化されてから1週間しかたってないからだと思いたい。が、実際のところ、この辺りでラティーノと呼ばれる中南部アメリカ大陸からの移民コニュニティの感染拡大は特にすさまじく、彼らのコミュニティでは、もしかしたら残り1週間たっても状況は良くならないかもしれない。

私はラティーノの人たちに感染者が多いのは、単純に在宅作業のできない仕事についている人たちが多いからだと思っていたのだが、どうやらそれだけではなさそうだ。

サンノゼ市は最近、このラティーノ居住区の家を足で一軒づつ周り、感染テストキットを配っているという。その第一の理由は、そこに居住している人たちは通常の無料テストサイトに簡単にアクセスできないことが多いからだ。アクセスできない理由としては、不法移民である可能性もあるし、合法移民であっても昼間はずっと仕事に出かけている人も多くテストサイトが開いている間にいけないということもある。健康保険を持っていないために医療費を心配している人もいるだろう。そもそも、英語がわからない人も多いので、テストサイトの場所や仕組みや費用などの重要な情報が正確に伝わっていない人も多いだろう。そこでサンノゼ市は、彼らの家を訪問してテストキットを配る試みを始めた。テストを受けてもらえれば、無症状の感染者を隔離でき、それにより感染拡大を食い止めることができるかもしれない。

私は、感染拡大の原因はコミュニティのことを考えないワガママを発端にしたコミュニティ感染なのかなと思っていたのだが、このニュースを読んで、話はそんなに単純ではないことがわかってきた。この感染拡大には、まさしく米国の貧富の差や教育環境の差が直接影響しているようだ。移民で英語の読み書きがあまりできず、家を一日中空けて食べるための仕事をしなくれはいけない人々。その間、家に残されて、インターネットアクセスが安定しない環境でオンライン授業に出なくてはいけない子どもたち。その環境では、ウィルス感染の正しい知識を得ることすら簡単ではないだろう。結局は、人から人の口伝えの曖昧な情報を基に彼らは暮らすしかなく、そのコミュニティから多数の被害者が出ているのだ。

そこには米国の構造上の問題が可視化されている。パンデミックは米国社会に巣食う様々な問題点を表面化するのに一役買っている。

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