シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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カリフォルニアを巡るいろんな数字(規制緩和フェーズ2)

久々に数字の話に戻るけれど、今日、カリフォルニア州の今回のパンデミックにおける総感染者は40万9千人を超えた。40万8千人のニューヨーク州を抜いて全米トップとなった。

あのニューヨークを超えてしまったなんて衝撃だが、カリフォルニアがあの時のニューヨークのように危機的な状態だと考えるは早とちりである。

違いは2つある。カリフォルニアの人口10万人に対する感染者数は1千人ちょっとだが、ニューヨークの人口10万人に対する感染者数は2千人を超えている。つまり、人口比に対する感染者数が倍近く違うのだ。カリフォルニアの人口に対する感染確率は未だに他の多くの州よりも比較的低い。

もう1つの違いは死亡率だ。死者数に至ってはカリフォルニアは累計8千人を超えてしまったが、ニューヨークの累計は実に3万2千人を超えている。ほぼ同じ累計感染者数を持っているのに、死者の累計数が4倍も違う。4月のニューヨークがいかに惨劇の場であったかがこの数字でよくわかる。これが医療崩壊の怖さだ。急激に爆発した感染者数に対応しきれず、医療物資も足りず、ベッドも足りず、ニューヨークはたくさんの人を救うことができなかった。

その悲しみを深く刻んだニューヨークは、今や感染を完全にコントロール下においている米国では貴重な州である。今でも感染者は数百人単位で報告されているが、コンタクトトレースもできており、カリフォルニアの新規感染者数が一日1万人を超えていることを考えれば、ニューヨークは今、本当によくやっていると思う。

さて、カリフォルニアのロサンゼルス郡の情報によると、新規感染者の57%が41歳以下であるという衝撃的な数字が出ていた。若い人が感染を気にせず遊び歩いているのが感染拡大の原因だと言われているが、このパーセンテージを見れば思わず納得である。

若者の行動を制御できないため、バーやレストランの室内での営業禁止規制が出されたのが6月の末だった。このシャットダウンの効果で、これらの数字は少しづつ増加率が緩くなる傾向を見せはじめている。テスト結果の陽性確率もほんの少しだが落ちてきている。先週からは、州内の全てのバーが室内だけではなく室外も含めて全面シャットダウンしたことを考えると、1週間後にはその効果が期待できるだろう。

ただし、若者はバーがダメななら、ホームパーティで飲んで騒いだりする。

バーなどの集まる場を失って、彼らは誰かの家に集まって飲んで騒いでいるかもしれない。最近はホームパーティを発端にするクラスタも多く報告されている。この日記に何度も登場しているけれど、そうやって集まって騒いでいる若者たちは感染拡大に対する自分たちの社会的責任を感じていない。

たくさんのホームパーティクラスタが報告されている南カリフォルニアでは感染拡大は顕著だ。ロサンゼルス郡では人口10万人に対する感染者の数は420人、そのすぐ南のベルナルディノでは410人、リバーサイドでは395人、そして、マスクを拒否し続けるかの有名なオレンジカウンティでは383人だ。

一方北カリフォルニアでは、州都のサクラメントでは人口10万人に対して194人だが、サンフランシスコで151人、我らがシリコンバレーのあるサンタクララでは124人となっている。同じカリフォルニアなのに北と南で随分大きな差があるのが興味深い。この差は一体なんなんだろう。

さて、最後に若者に話を戻すと、感染拡大を無関係として行動する若者の言動は一部の人々に一昔前のある論争を思い起こさせている。かつて喫煙者は、タバコをすうことは個々の責任であり、権利であると言ったものだ。実際は、受動喫煙で他人の命を危険にさらしていることが判明、様々な研究や裁判をへて、カリフォルニア州の公的施設では今や喫煙が一切できない。喫煙者の行動を変えるには、自己認識による行動の変化と同時に厳しい法規制や教育も必要となった。今回の感染に対しても、多くの若者が自己責任でやっているのだから構わないと感染防止の努力をしない。しかし、すでに明らかになっているように、彼らは自分だけではなく、確実に周りの多くの人々の命を危険にさらしているのだ。

実際に、友達と出かけた息子から家族に感染が広がり、親が入院した例も報告されている。自分が感染することにより家族を感染させ、その命を危険にさらす立場になったら、どんなに後悔するだろう。彼らには想像力が足りない。

5月に読んだニュースを思い出す。自分の不注意から感染し、父親に感染させた息子の話だった。父親は亡くなり、息子は後悔しても後悔しきれない。生前、父親は息子を一度も責めなかった。良い息子を持ったと、死を覚悟した病院のベッドから電話をかけてきたそうだ。息子は自分が許せない。しかし、どんなに自分を責めても、父親は帰ってこないのである。

 

 

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