シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

姉妹サイト「シリコンバレーをよむ」もぜひご訪問ください

無知という罪(規制緩和フェーズ2・次の緩和レベルまで残り8日)

5月の後半から徐々に規制緩和を進めてきたカリフォルニア州が、全ての郡で本格的な緩和体制に入ってきたのが6月の初めだ。住民の多い都市部を含む郡は規制緩和に非常に慎重だが、地方の郡は比較的早く緩和を進めている。

規制緩和の条件はNew Normalな生活を受け入れることだ。それが、感染を拡大を抑えつつ、ビジネスを再開できる唯一の方法だと言われている。New Normalでは、公衆では常にマスクを身につけ、可能な限りソーシャルディスタンスをとって行動する。また、人がたくさん集まるようなイベントはなるべく避けなくてはならない。ワクチンが摂取できるようにまで、そのような地味で窮屈な生活を続けるのは簡単なことではないが、残念ながら必要なことなのだと受け入れ、身の回りの小さな楽しみで生活を彩ろうと様々な工夫をしているカリフォルニア民は多い。

しかし、世の中には保守的な人たちがどこにでもいる。そんな人たちにとってNew Normalなんてものは、もってのほからしい。許可があろうがなかろうが、自分たちは元の生活に帰るし、他人が自分に、ああしろ、こうしろなんて言う権利はない、と考える人たちだ。

そういう保守的な人々が集まっていることで有名な郡がオレンジカウンティである。オレンジカウンティは、ロサンゼルスとサンディエゴに挟まれた郊外にあたる高級住宅が多い郡だ。そのオレンジカウンティで、緩和が進む中、感染拡大を憂慮した保健局のドクターが、公衆でのマスクの着用を必須にするルールを設置した途端、保守派の住民から猛反発、抗議、嫌がらせを受けた。最終的には、命を狙われるような脅迫までされ、彼女は辞職してしまった。

新しくその役職に就いたドクターは、やむをえず、マスクの着用を非常に強く推奨するにとどめ、必須にはしなかった。これにより、保守派の人たちはマスクを着用せずに行動できるようになったらしい。

前にも書いたけれど、マスクの着用は感染拡大防止に非常に高い効果があると、これまでのたくさんのデータは示している。特にわかりやすかったのは、ミズーリーの美容師が感染症状があったのに、マスクをして12日間の間100人以上の人に関わったの結果、誰一人として感染しなかったことが発表されたニュースだった。どうやらマスクの効果は絶大のようである。

にもかからず、なぜかオレンジカウンティに住む保守派の人々にとっては、マスクは敵なのだ。

マスクをしても感染予防にならないというような話ではない。マスクをすると、体内の酸素レベルが下がるとか、酸素よりも二酸化炭素をたくさん吸ってしまうとか、日本人が聞いたら呆気に取られるような変なデマが流れているらしい。

これを無知という。

また、保守派の牙城ということで共和党の支持者が多い。共和党のトランプ大統領はマスクをしないし、規制はこれ以上必要なく普通の生活に戻っても大丈夫だと取れる主張している。そこで、マスクをしないで、規制に反対することは、共和党員として重要なスタイルということもあるかもしれない。

これは政治的なパフォーマンスだ

このように、無知と政治的なパフォーマンスが混ざり合って、明らかに有効な感染拡大予防の方法が否定されてしまう。ただ、マスクをするだけで、周り回って助けられる命があるかもしれないのに、それができなのは歯がゆい。

日本人の感覚ではちょっと理解できないような、マスクに一体どれほどの偏見があるのかと絶句するような、一種の衝撃を受けたレポートだった。ちなみに、オレンジカウンティでは、感染者数は増え続けているし、入院患者数も死者も増え続けている。

最後にショッピングセンターに来ていた住人の一人がインタビューされていた。

「誰もがマスクが役にたつと思ってるわけじゃないのよ。私はマスクは返って体に悪いと思っているの。だって、自分が吐き出した菌を吸ってしまうでしょ?

ここまでくると、無知は一種の罪である。この無知を彼女に与えてしまっている、または受け入れさせてしまっている、何かが大罪なのだ。

 

PVアクセスランキング にほんブログ村