シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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マスクのある生活(規制緩和フェーズ2・次の緩和レベルまで残り11日)

2週間ほど前、スプリングフィールドで、症状が出ていたにもかかわらず、何十人もの顧客の髪を切った美容師のニュースを読んで、その無責任さや非常識さに衝撃を受け「悩める床屋」という日記を書いたのが5月24日。今日は、そのニュースの後日談としてもっと衝撃的なニュースを読んだ。

この事件で感染が陽性と診断された美容師は2人で、彼らは5月12日から20日までの間、合計で100人を超える顧客と同じ店で働いている同僚の美容師6人に感染リスクを与えた。幸いヘアサロンという店の特徴で、該当する顧客とコンタクトを取るのは簡単だったはずで、彼らは全員追跡され、何度か感染テストを受けた。

その結果、潜伏期間と言われる2週間をとっくに超えてもなお、感染した顧客も同僚も皆無であることがレポートされたのだ。

これまで、美容院や床屋は感染リスクが高いという理由で、他の様々なビジネスより遅れて規制が緩和されている。ちなみにカリフォルニアでは、まだ営業再開にこぎつけていない。感染リスクには、これまでに判明したコンタクトトレースの結果が反映されていることを考えると、ロックダウンの前は明らかに美容院や床屋での感染が多く確認されていたと思われる。

それなのに、このスプリングフィールドの事件では、美容師に明らかに感染症状があったにもかかわらず感染は発生しなかったのである。なぜだ?何か違う?わかりやすく明確に違うのは、美容師も顧客もマスクをしていたことだ。

つまり、この事件は図らずしも、マスクが感染拡大を防ぐために非常に効果があることを証明した形になった。誰もこれほど明確な結果が出るとは思っていなかっただだろう。

そう考えると、色々納得できることがある。ロックダウン対策が遅れたにもかかわらず、日本の感染が非常に低いレートに抑えられていることの要因の一つはマスクかもしれない。日本ではマスクの着用は3月のパンデミック前からごく普通のことだった。もちろんその頃から全員がマスクをしていた訳ではないが、少なくとも公衆でマスクをすることは日本ではごく普通のことだし、パンデミックが発表になってからは、それこそ全員がごく自然にマスクを着用した。

その頃はWHOでさえ、感染拡大の予防に対するマスクの有効性を肯定していず、米国ではマスクをして街を歩く人は皆無だった。米国在住の日本人がたまにマスクをしていると変な注目を集めてしまうくらいに、マスクは街で着用するものではなかった。しかし、実際のところは、この美容院のケースでわかるように、マスクは感染拡大を抑えることができる非常にシンプルな武器であったようなのである。

また、最近、韓国でも日本でも新しい感染源は夜の繁華街が多い。これも、マスクと関係があるかもしれない。夜の繁華街で、常にマスクを着用しているという風景は想像しがたい。大音響の流れるクラブで踊っている人は多分マスクはしていないだろう。また、美しく着飾ったホステスやホストが客に微笑むときに、マスクをしていることも多分ないだろう。酔っ払った客が飲んだり食べたりするときに、マスクは外しているだろうし、お酒でいい気分になっていつもよりも大きな声で話したり笑ったりするだろう。そうやって、夜の繁華街の屋内にはたくさんの唾液が放出されいる。ここでも、マスクをしているしていないが、感染を拡大する拡大しないに関係しているように思われる。

マスクはこれほどに重要だったということか。マスクは感染していない人よりも、感染している人がすると非常に効果がある。今回のパンデミックのように、感染症状がなかったたり、感染症状が軽かった場合、感染に気づかずに暮らしていることもありうるので、全員がマスクをすることが感染拡大を予防することになるのだ。

さて、もうすぐシリコンバレーでも美容院があくと言われている。昨日まではたとえ開店しても、行くか行かないか迷っていた。しかし、このニュースを読んで、店にいる美容師も客もマスクをしてくれている限りは(マスク着用が営業条件になる可能性が高い)、あまり心配せずに美容院に行っても良さそうだ。

そして、これからワクチンが開発されるまでの長い間、人々はとにかくマスクの着用を徹底してほしい。特に感染リスクの高い室内では、人々が全員でマスクをすることによって感染リスクを低く抑えることができる。マスク着用は確かに快適ではないかもしれない。しかし、この厳しく長い戦いで、手軽かつシンプルで誰にでも手に入る有効な武器なのだ。

米国の人々は未だにマスクに慣れていない。マスクをしていると人の表情から受けることのできる情報の半分以上が落ちてしまうために、コミュニケーションに誤解が生じやすいと感じている。目は心の窓というけれど、実際のところは口や顎も相当に心の動きを表現している。口が隠されている今、人々はこれまでよりも頻繁にボディランゲージを使って、自分の心の動きを伝える方法を考える必要があるのかもしれない。

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