シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

姉妹サイト「シリコンバレーをよむ」もぜひご訪問ください

ロックダウンの副産物(ロックダウン27日目・解除予定日まで残り22日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。4月11日土曜日、今日のシ

リコンバレーは雲ひとつない快晴で、最高気温は20度まで上がった。散歩をしていると強い日差しの下では少し汗ばみ、木陰で休むと涼しい風がサアっと吹いてきて、汗を乾かすついでに体温を下げてくれる。カリフォルニアは気持ち良い季節になった。

ロックダウンが始まってから、住宅地やその周辺のトレイルを家族で散歩をする人が増えたという話を前に書いたが、今日もそんな小さな群が、街路の右に左にトコトコと移動しながら歩いている。一人で歩いている人もいるけれど、運動不足解消のためだろうか、とにかく家族で歩いている人たちが多い。

この家族の散歩は、ロックダウンの副産物として最初にあげてもよいだろう。人々は確実にロックダウン前よりも家族でいろんなことをするようになった。家族としか普通に会話する距離まで近づけないのだから当たり前なのだけれど、これを機会に家族を持つ人々は家族との関係をもう一度見直すことになるだろう。

それは必ずしもよい方向だけとは限らない。今日、閑静な住宅街ですれ違った女性が、険しい顔をして電話に向かってしゃべっていたのだが、すれ違って少したところで、突然彼女の怒鳴り声が住宅街に響き渡った。

「なんなの、あんた?ちょっと自転車動かしといてって言ってるだけでしょ?たったそれだけが、できないっていうの?じゃあ、あんたは何してんの?一日中ビデオゲームしてるだけじゃん?あんた、一体何やってんの?バカじゃないの?クズ?」

彼女は逆上してFワードを連発し始めた。ごく普通の中年のよい身なりをした女性が、閑静な住宅地の真ん中でFワードを響かせている。シュールな光景だ。

中国では、ロックダウンが緩くなった途端に通常の数倍もの離婚届がファイルされたというニュースを読んだ。広くない家の中で、24時間一緒にいる生活が何週間も続いた結果である。また、家庭内暴力や子供の虐待などの心配も広がっていて、そのための避難施設も検討されているようだ。

もちろん、よい方向に進んでいる家族もいるだろう。普段会話をしないティーンエイジャーも、今は家族と一緒に散歩をしたりしている。昔流行ったインラインスケートを引っ張り出して車通りの途絶えた街路を親子で滑っている人がいる。時間があるお父さんたちが、子供と一緒に自転車に乗ったり、ボール遊びをしたりする風景を頻繁に出会うようになった。歩道のあちこちには子供達のチョークアートが溢れている。歩道がこんなに子供のチョークアートで埋められているのを見るのは米国にきてから初めてだと思う。

家の前で庭の手入れをしている人も多い。一軒の家では前庭の大きな木の枝を伐採してドライブウェイに積み上げていた。車がガレージに入った状態だったので、「それじゃ車が出せないじゃん」と思ってから、「ああそうか、車は出す必要がないんだ」と思い出す。Stay At Home だから、車で出かけるのは食料品の買い物を週に数回ぐらい。だから、ドライブウェイに大量の枝がしばらく転がっていても大丈夫なんだな。

そういえば、警察はしばらくの間、駐車禁止のチケットを切らないと発表した。カリフォルには完全な車社会だから、車は1人1台だ。1家族で車を3台4台も珍しくない。特にアパート暮らしの人は駐車スペースが足りない。そんな車はガレージやドライブウェイに収まりきらず路駐になるのだが、普段は夜だけ路駐してされている車も今は24時間路駐されている。この現状を汲み取って、警察は駐車禁止の取り締まりを緩めたのだ。

散歩をしている人は犬を連れている人が多いのだが、ロックダウンが始まってからアニマルシェルターで引き取り手を待っていたたくさんのペットたち全てが新しい主人の元に引き取られたというニュースを読んだ。家で過ごさなくてはいけない人々が、新しい癒しを求めて、アニマルシェルターから次々と動物を引き取っていったらしい。時間ができたらペットを飼おうと思っていた人たちが、これを機会に殺到したのだろう。

そんな風にロックダウンは思いもしない副産物を生みながら進んでいく。そういう私の生活にも、このブログという副産物を生み出した。

さて、ニュースではロックダウンは5月の始めに解除するべきか、5月の末に解除するべきなのかが議論され始めた。そんななか、米国の死者数は、あっという間に二万人を超えて世界のトップに躍り出てしまった。なんでもトップが好きな国だけれど、この数字ではトップにならずに済めばよかったのにと思う。

NYの死者数は、過去3週間爆発的に増え続けてきたのだが、今週の水曜日からは1日770人から790人の死者で推移している。NYの州知事は「死者の数が安定してきたようだが、安定した数字は恐ろしい数だった。」と語った。その通りである。今後1日の死者数は徐々に減る傾向になるはずで、早くこの痛々しい死者数が減って欲しい。

しかし、減ったからといってロックダウンが解除できるのかといえば、それは疑問だ。一説によれば、5月の初めにロックダウンを解除すると、感染者数は確実にリバウンドし、最悪の場合は7月に今と同じような状態に戻るといっているCNNのニュースを読んだ。毎日が緊迫した今の状態へのリバウンドは許されない。

5月初めのロックダウン解除は期待しないほうがよさそうだ。延長が決まったらブログで報告して、減りづづけるはずだったタイトルの解除予定日までの残り日数が増えてしまうことになるだろう。

 

PVアクセスランキング にほんブログ村