シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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大丈夫なパーティなどはない(オレンジティア)

水曜日の米国の新規感染者数は14万人を超えた。あまりにも順調に着々と感染が広がっている。そして、今日も現政権からはなんのメッセージも発表されなかった。

ちなみに今日は、エジプトでヘリコプターの事故があり米国軍人が6人亡くなったり、北フロリダにハリケーンが上陸して洪水が発生したりと、通常であればホワイトハウスからなんらかの対応やコメントがあるべきニュースが多い一日だったのだが、すべてスルーされて、大統領からは選挙の不正を主張する複数のツイッターだけが国民に届けられた。

なんだかとても虚しい。

幸いなことに、この日記で何度も繰り返して語っているように、米国は州の自治権が強く、州政府には力がある。そこで、混乱の極みでまったく役にたたない現連邦政府は無視して、各州政府や自治体がさまざまな対応に追われている。

感染拡大が著しい中央部イリノイ州シカゴは、本日、SIP(Shelter-In-Place:必要以外は外出を避けるための勧告)を来週の月曜から再開することを発表した。ちなみに米国では、最近ロックダウンという言葉を意図的に避けることが多い。3月4月のロックダウンの経済への影響があまりにも強烈だったために、ロックダウンという言葉に拒否反応を起こす人が多いせいか、自宅待機令は SIP と呼ばれることが多い。実際のところは、生活必需品の買い物や病院などの必要な用事以外は可能な限り家で過ごすように勧告されている SIP は、ロックダウンの1つの形式だと考えてよいだろう。

さて、このとてつもない規模の秋の感染拡大の原因は、春の感染拡大とも夏の感染拡大とも少し違うといわれている。春も夏も感染クラスタの主な舞台は、老人ケア施設とナイトクラブやバーだった。つまり、老人ケア施設を重点的に守り、ナイトクラブやバーを閉めることによって、感染の拡大をある程度食い止めることができた。しかし、現在の感染は違うらしい。多くのクラスタの発生源は小規模な家庭のパーティであるらしいのだ。

感謝祭やクリスマスの後であるならばまだしも、まだ米国はホリデーシーズンに入っていない。ハロウィーンがあったけれども、この感染拡大はハロウィーンの前から始まっていたので、ハロウィーンも少しは貢献しているかもしれないが、それだけではない。じゃあ、なんのパーティなんだ?どうやら米国の人々は本格的に自粛疲れ状態に入ってしまったらしい。

半年以上に渡る自粛生活の中で、人々は同じメンバーだけで時間を過ごす変化のない生活にほとほと疲れてしまった。少しぐらいなら、親戚だけなら、親友だけなら、人数がすくないなら、と様々な言い訳をして集まるようになっている。それでも、外で時間を過ごせる間はよかったのだが、徐々に気温が下がり、人々が外で遊び回るのをやめて、室内で集まるようになるにつれて、ウィルスは実に巧妙に人々の間に蔓延し始めたのである。

春の感染拡大時に始まったソーシャルバブルと呼ばれる考え方がある。2家族3家族が一緒に自粛するというものだ。他の家族とはしっかり距離を取る代わりに、自分たちのソーシャルバブル内では、マスクをせずソーシャルディスタンスもとらずに一緒に遊んだりする。幼い子供がいる家族には大きな助けになる自粛方法だが、この考え方も、自粛生活が長引くに従って、当初の理念からだいぶずれしまっているらしい。

1つの家族が複数のソーシャルバブルに参加しているケースが増えてきたのだ。2家族だったはずのソーシャルバブル同士が知らない間にくっついて4家族に、6家族にと繋がっていく。なぜ、知らない間にバブルが大きくなるのかというと、バブルを構成している家族は、バブル仲間の家族が実は別のソーシャルバブルにも入っているかもしれないと感じていても、それを確認しないことが多いからだ。米国人は思ったことを何でも言う人たちだと考えるのは、実情を知らないステレオタイプでしかない。米国人にも、聞きにくいと感じる質問は普通にたくさんあるし、一緒に過ごしている友人との関係がギクシャクするのは気まずいし嫌だと感じることも普通だ。

これを繰り返す間にバブルはどんどん大きく広がって意味をなさなくなる。そして、どこかからウィルスが入り込んでくれば、大きなバブルは大きなクラスタになりうるというわけだ。

自粛疲れにほとほと嫌気がさした人々は、子供の誕生日だから、親友に招待されたから、様々な言い訳をして集まる。今や、リビングルームやダイニングテーブルがウィルスの感染拡大経路になっている。本当に親しい人たちしか集めないから、と人々は言う。その主張には意味がない。本当に親しいから、信用しているからこそ、人々の防御壁が下がってしまうからだ。そこに、目に見えないウィルスは静かにそっと侵入してくる。

テキサスに住む若い女性が、何ヶ月かぶりに親戚が集まるパーティに呼ばれた。甥の誕生日パーティで、親戚だけが25人集まったものだった。何ヶ月ぶりに親戚にあって、パンデミック前のように楽しい時間を過ごした彼女だが、翌週には具合が悪くなり陽性結果がでた。最終的には、パーティ参加者のうち彼女を含めて11人が発症している。このウィルスは感染しても気づかずに過ごす人が多いため、信用している人だからといって感染していない保障はまったくない。

また、学校が始まった子どもたちは、授業中は規制が守られているので感染拡大が起こらないのだが、学校後に集まったり、スポーツをしたり、お泊り会をしたりすることが感染拡大を導いているという。勉強するだけならば学校に行きたがらない子どもたちはたくさんいる。学校に行けば友達がいて、放課後遊んだりスポーツをしたりするのが楽しみで学校に行く子供も多いのだと考えれば無理もない。

最大の問題は、このようなコミュニティ感染は規制違反であっても警察や自治体が取り締まれるようなものではない。住人が自覚を持って自らの行動を規制しなくては、感染拡大は止まらないのだ。

ロードアイランド州のレイモンド州知事は次のようにコメントした。

我々は人間だ。その気持は理解できる。それでも、やめなくてはいけない。

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