シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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世紀末の様相(規制緩和フェーズ2)

パンデミック時に災害で避難勧告がでたらどうするのか?

あまり考えたくないシチュエーションが、今、北カリフォルニアのあちらこちらで実際に起こっている。

ことの始まりは先週の金曜日から始まったカリフォルニアへの熱波の到来だった。近年での記録的な暑さの熱波が想定外に長く続く予報に住民が辟易していた。普段なら涼をとる娯楽施設もパンデミックのため開いていない。それでも、一週間も我慢すれば涼しく快適な北カリフォルニアが戻ってくると我慢して迎えた日曜日の明け方、爆音のような地響きとともに何十本もの稲妻が北カリフォルニアを襲った。嵐だった。嵐は落雷と暴風をもたらしたものの、一番必要は雨はほとんど落とさず、熱波は最高潮摂氏40度を迎えた。

この落雷がカリフォルニアの晩夏、熱波の中で乾ききった森に火を放ったのである。

シリコンバレー近辺のあちらこちらの森で山火事が発生した。サンフランシスコの北のナパバレー、シリコンバレーの東南の広大な森林エリア、そしてシリコンバレーのすぐ西側に伸びるサンタクララマウンテン。とにかく、東西南北、今、シリコンバレーは山火事に囲まれている。

幸いなことに、一番近いサンタクララマウンテンの山火事は他の山火事に比べると小規模だ。サンタクララマウンテンの海側の一部が燃えているのだが、そちら側は太平洋に面するので、他の山火事エリアよりも土地が乾ききっていない。そのため、燃え広がる速度が比較的遅いのではないかと思われる。

山火事からあがる煙と灰の威力はものすごく、この煙と灰がどの山火事からきているのか、それともすべてが混ざっているのか、はっきり限定できないのだが、空は煙で不気味なオレンジがかったグレー、細かい灰が駐車してある車の屋根にひらひらと積もっている。煙越しにちらつく太陽は、ぽってりと赤く、その光をにじませる煙は紅色だ。地上に届く光線も赤みがかったオレンジ色。朝だというのに、窓から見えるのは夕日に照らされたような風景だ。

外には出られない。ロックダウンのせいではない。山火事のせいで空気が不健康なレベルに汚染されているのだ。用事があって外に出れば、奇妙な日差しの中焦げ臭い匂いに包まれる。これ、どっかでみたことがある。ああ、SF映画の世紀末の様相だ。

今や、シリコンバレーは散歩に外に出ることもできない、完全な室内隔離状態になってしまった。この山火事がいつ収まるのかはまだわからないが、少なくとも今週いっぱいは空気が汚染された状態が続くのではないかと予想されている。

火災は激しく、消防士が足りない。ニューサム知事は非常事態を宣言し、他州から消防士の助っ人を依頼した。

実は、四方を山火事にかこまれて煙っているとはいえ、シリコンバレーは運がいいほうだ。火災にもっと近い住民はすでに避難勧告が出され、自宅から避難所に逃れている。パンデミックの最中、避難するのは大変だったろうし、避難所で過ごすのも大変だろう。車で20分ぐらいの山間の街でも避難勧告が出て、その避難所が写っていたのだが、なんと1家族つづテントを張っていた。確かにあの方法であれば、ソーシャルディスタンスは保てるが、熱波が収まっていない今、テントでの暮らしの大変さは想像できる。そんな風に他人事のように言ってられるのも今だけかもしれない。もし海から突風が吹き、山火事が風にのってサンタクララマウンテンを登ってきて、山のこちら側に降りてきたら、シリコンバレーはすぐ膝元だ。そんなことはないとは思うけど、一応避難するときの荷物は考えておいたほうがいい。

パンデミックのときに必要な避難道具ってなんだろう。普通に貴重品、水、衣類はもちろんだけれど、それだけじゃない。ニュースを読んでいたら、ちょうどそういう記事があって、ハンドサニタイザーとマスクはある限り持ち出すようにと書いてあった。そうだ、そうだ、とハンドサニタイザーとマスクの場所を確認する。

それから、常備薬と食べ物。避難中に体力が落ちると免疫力が落ちる。その上、人が集まる避難所にいるとなると、感染リスクはどんどん高くなる。体力を落とさないように、最大限の努力をしないとならない。避難して、自宅が無事かどうかもわからない不安の中で、感染のリスクにも気をつけなくてはいけない生活はどんなものだろう。ニュースの向こうの避難している人々のことを考えると気の毒だ。

これ以上山火事が近づいてこなくても、もしかしたら近所の山も燃え始めるかもしれない。やはり避難道具を用意して、ニュースを常に確認しなくてはと、仕事をしながら一日中、山火事と空気汚染のニュースを追っていた。

そんな今日は、パンデミックのニュースを読む暇すらなく、地元のニュースもウィルス感染について報じる余裕はなさそうだった。ニュース画面は燃える火の粉でいっぱいだ。

一日でも早い消火と通常の生活の回復が望まれる。そこで待っている生活はNew Normalだけど、今のアブノーマルよりはずっと平和な生活だった。

f:id:sarukunSV:20200820174643j:plain    煙ににじむ太陽

 

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