シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ユニバーサルマスクが米国を救うか(規制緩和フェーズ2)

以前もこの日記に登場したことのある University of WashintonのCOVID-19 Projections が昨日更新された。1週間に一度ぐらいの頻度で更新されるこのサイトは、COVID-19感染者数や死者数のこれまでのデータを元にした予測値に加え、必要になると予測される医療リソース数(ベッド数、ICUベッド数、人工呼吸器数)と実際に使用可能なリソース数の比較など信頼性の高いデータとして知られている。

規制が緩和されるに従って急激に増える感染者の数のことを考えると今回更新されたデータは元々注目すべきものだったのだが、実際見てみるとそれ以上に興味深く、多くの人にこのデータを見て欲しいと思った。

今回の予測値には、通常の現状を元にした予測値に加え、もし今以上規制が緩和された場合の予測値と、もし社会全体がマスクをした場合の予測値を同じグラフに並べることにより、今後の対応によってどれだけ犠牲者数が変わる可能性があるのかを示している。

衝撃的なのは、社会全体がマスクをした時、1日あたりの死者数グラフが急激に減少曲線を描くことだ。このプロジェクションでは、社会全体がマスクをする状態をユニバーサルマスクと呼んでいるのだが、ユニバーサルマスクに移行すれば、たったの半月でその効果が出はじめ、最終結果が大きく変わってくることを示している。

具体的な数字をあげると、このままの状態でいけば10月1日までの米国の死者数は約17万9千人と予想されているのだが、ユニバーサルマスクで対応すれば約14万6千人であり、3万3千人の命が助かるという試算をしている。

日本からみれば14万6千人だってとてつもない死者数だが、すでに米国の死者数は12万5千人に届く勢いなので、マスクをするだけで今後4ヶ月間に予想されている5万4千人の犠牲が2万1千人、つまり半分以下になるのだと考えれば、この差は際立つ。

特に今大きな感染の波にのまれて、感染者がひたすら増加し続けているアリゾナやフロリダのデータを見れば、ユニバーサルマスクと現状の死者数の予想値の差は驚くほど大きい。

これらのデータは人によっては信用できないのものなのかもしれない。しかし、様々なリサーチだけではなく、いろんなニュースを読むことによる体感からしてもマスクの効果が絶大なので、私はこの予想は信頼してもいいと思っている。

そうだ。マスクはこんなに効果がある。それなのに、なぜマスクをしない人がたくさんいるんだろう。マスクは役に立たないとか、体に悪いとか、臆病者が使うものだとか、ありとあらゆる偏見と、暑いだとか、息苦しいだとか、面倒臭いという怠惰と、見かけが悪いという自己愛によって、失われる必要のない命が失われていく。

2日前、この日記にも何度か登場している多くの人々に尊敬されている感染症の権威アンソニー・ファウチ博士と、やはりこの日記に何度か登場している全米で最も早くサンタクララ郡にロックダウンを宣言した保健局オフィサー、サラ・コーディ博士が、カリフォルニアの州都であるサクラメントの記者クラブが主催したバーチャルQ&Aに参加した。

ファウチ博士は、カリフォルニアの感染対応をよくやっていると評価していて、感染者は増えているがロックダウンに戻る必要はない、ただ、少し歩みを停止して正すことのできるところを正せばいいのだとコメントしていた。「これは『自分のことを気をつけていれば、他人このことはどうでもいい』という問題ではありません。自分がすることが、他人にインパクトを与えることなのです。

コーディ博士は、緩和に伴い許容された以上に社会が緩んでいく現状に一定の理解を示している。「皆が失われてしまった生活を嘆き、なんとかして取り戻そうとしている」ことは理解できる。今は人々は新しい生活に適応するための学習期間なのだとコメントしていた。

これらの公衆衛生の専門家たちが、なるべく多くの命を救うため、与えられた使命を果たすために人々を啓発し続けている。一人でも多くの米国人が彼らの言葉に耳を傾けて、マスクをしてソーシャルディスタンスを守ることにより、多くの命を救っているんだという誇りを持って、ウィルスと共存していくNew Normalな社会にできるだけ早く適応していってほしい。

covid19.healthdata.org

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