シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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買い出しの非日常(ロックダウン21日目・解除予定日まで残り28日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

今日は4月5日、日曜日、シリコンバレーはの天気は嵐、朝から大雨が振り続け、もともと外に出る予定はなかったとはいえ、全く外にでる気にならない1日だった。土砂降りのせいで裏庭に華やいでいたシャンパンホワイトの大輪の薔薇が散ってしまって、なんとも陰気な風景だ。

インターネットニュースでは、次から次へと今週の米国は厳しく悲しい週になるであろうという記事が流れ続けているので、とうとう読むのをやめてしまった。もう今日は十分読んだ。情報というのは足りないと危機的まずいが、多すぎても精神衛生上よくない。暗くて肌寒い天気にこれらの記事を読んでいたら、今週は買い出しにいくのを辞めようという気になってきた。

3月31日にロックダウンの規制が厳しくなってから食料品の買い出しは大変な作業になった。商品がないからではない。昨日も書いたけれど、粉類以外の商品は、もうだいたい見つけることができる。余談だが、昨日書いたことといえば、グリとグラが作ったのはパンケーキじゃなくてカステラだったと、今朝起きて突然思い出した。記憶って面白い。

話は戻って、なぜ買い出しが大変な作業になったのかというと、厳しくなった規制により食料品店は、買い物客同士が店の中で十分な距離を保てるように、入場制限を余儀なくされたからである。

どの店に行っても、店の入り口には買い物客の行列がある。行列も1組ごとに2m弱を開けなくてはいけないので、人がそれほど多くなくてもとてつもなく長い行列が構成される。比較的小さな店だと、なかなか順番が回ってこないので、前後の間隔が不自然なほど空いた行列にポツリと立っている時間が長い。

ようやく中に入ると、当然ながら、店の中はいつもより空いている。商品も棚にいっぱい溢れている。じゃあ、買い物中はストレスがないのかというと、そうでもないのだ。長く待ってようやく入った店なので、買い忘れがないように念には念を入れて棚をまわるのだけれど、他の客とすれ違うたびに互いの距離を保つために通路を遠回りしたり、行き過ぎるのを立ち止まって待ったりする必要があるので、スムースな買い物とは言い難い。最後にレジに行くと、前述のように混んではいないのだが、1組ごと2mのルールはここでも守らなくてはいけないので列は長い。また、店によって、1組終わるごとにレジ台を消毒してくれるのは安心だけど、時間がかかる。

この辺りでは誰もが使うエコバックも今は使えない。定員と客の接触を最小限にするために、お店が用意している紙袋かビニール袋を使ってお店の人が詰めてくれる。また、お店の人と客の間には透明のプラスチックの板が設置されるようになった。

これらの処置の全てが厳しい規制による強制ではない。今、閉鎖空間で不特定多数の人に接する仕事を続けなくてはいけない食料品店の従業員は、医療関係者ほどではないとはいえ、リスクが高い仕事であると捉えられている。そこで、店の管理者は従業員の安全のためにできる限りの対策をとることを要求されていて、対策を行なっていない店では、従業員たちがSNSを使って告発をはじめているのだ。

そんなこんなで、先週の半ばぐらいから、普通の食料品を普通のスーパーに買いに行くと、そこで目にする光景は全然普通ではなくなってしまった。待ち時間や買い物中のストレスもさることながら、その普通ではない光景の一つ一つが、私たちの置かれた状況の深刻さをひしひしと感じさせるのである。

これは、私が米国でこれまで体験したどのクライシスとも全く違う本当に身近なクライシスなのだと。

 

明日はそんな暗いニュースの続く米国の中でも頑張るシリコンバレー魂の話。

 

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