NYの友人からのメッセージ（ロックダウン18日目・解除予定日まで残り31日）

最初の2週間は、目まぐるしく変化しながら提供される情報の整理と規制された行動に慣れるのに精一杯で、身の回りのことしかみる余裕がなかったけれど、家族だけで家にこもり続ける生活にもだんだん慣れてきて、リズムができあがってくると、視線をもっと遠くに向けることができるようになる。

そんなある日、息子がポツリと言った。

「○○、大丈夫かなぁ」

そうだ！息子の友人の中には、去年の夏にシリコンバレーからニューヨークに引っ越した家族がいる。家族で親しくしていたのだが、そういえば奥さんの職業は医者だった！

絶対忙しいだろうけど、忙しくてチャットなんてみる余裕もないかもしれないけど、友人が自分たちのことを考えてくれていると知るのは、きっと悪いことじゃない。短いメッセージを入れて、私たちが心配していることだけでも知ってもらおう。

そう考えて送ったメッセージには、思いのほか早く返信がかえってきた。ちょうど夜勤ではないタイミングだったのだろう。

「心配してくれてありがとう。子供達は主人と一緒にカリフォルニアの親戚のところに送りました。病院ではどんどん人が死んでいます。私たちはまるで戦場の最前線の兵士のようです。」

彼女は家族を比較的安全なカリフォルニアに送り、ニューヨークの病院で孤軍奮闘中だった。ロックダウン中のニューヨークはまさしく見えない敵と戦っている静かな戦場で、医療関係者たちはその最前線に立っているのである。

「病院のスタッフは、毎日、コロナウィルスの患者の数に圧倒されています。私も、10人から15人の死亡証明書を書かなくてはいけない日もあります。そんな日々は私たちを体力的にも精神的にも消耗させています。」

ピコンと彼女は防護服姿の写真を送ってきた。目と耳以外はビニールの防護服に包まれた彼女は、スニーカをはいたズボンの上から長いビニール袋のようなものをはいて膝のところで紐でくくっている。

「長靴が足りなくなったのでスニーカの上からビニール袋を巻いています。これがとても暑くて。。。」

ニューヨークでは医療品の危機が始まっているというニュースは読んでいたが、親しい人から伝えてもらうニューヨークの医療危機の現状は生々しい。

どんな返信をすればいいのか迷いながら返信をする。

「かけることのできる言葉が正直に言って思いつきません。ただ、これだけは言えるのは、あなたたち医療関係者は、人類の歴史上極めて価値のある使命を果たしていると思います。あなたたちは、今、この国で一番勇敢な人々であり、私たちはあなた方のことを思い、尊敬し、無事を願い続けています。」

彼女は太字を使ってこう返してきた。

「あなたのいう通りです。これは将来二度と起こっていけないこと。ここにいる全ての医者がそう言っています。私のことを考えてくれてありがとう。それだけでも私にとっては十分な意味があります。」

このメッセージをやりとりしてから、3日たった今日、ニューヨークの感染者数は9万人を超え、死亡者は2千人を超えている。感染者数が描くカーブの急な傾斜は緩むところを知らない。昨日、連邦政府は連邦政府の医療機器のストックがつきそうであるという発表をした。

今日の彼女はどうしているだろう。私が彼女にできることは、彼女の無事を祈ることだけだ。

しかし、まだ感染していない私たち全員にできることは、感染しない、感染させない、そして元気で家にいることなのだ。これによって、病院のアセットを使わせることなく、底をつきそうな医療機器を補給するための時間稼ぎができる。

ホワイトハウスのカンファレンスでDr. BIRXはこんなことを言っていた。

「（規制が国民にとって）大変なストレスであることは理解しています。しかし、最前線で戦っている兵士たちのストレスはさらに高く、さらに難しい状況です。（中略）魔法の弾も魔法のワクチンも魔法のセラピーもありません。あるのは行動だけです。今後30日間の私たち一人一人の行動だけが、このスパイラルパンデミックのコースを変えることができるのです。」

だから、今日も私たちは家にいる。家で、仕事をして、勉強をして、料理を作って、ご飯をのんびり美味しくいただいて、本を読んだり、インターネットサーフィンをしたり、テレビを見たり、VRゲームをして遊んだりしているだけで、私たちはこの国を救う手伝いをしている。厳しい戦いを強いられている兵士達を遠くから助けていると思えば外出規制なんてなんでもない。

明日は、規制されていない散歩に出て、家の外のシリコンバレーの様子について描きたい。