ワクチン後初の三連休
パンデミックが始まってからというもの、連休というのは悪い予感でしかなかった。連休のたびに規制が破られ、沢山の人がホームーパーティを開いたり、旅行をしたりする影響で、翌週や2週間後にはほぼ必ずと行っていいほど、感染拡大が発生したからだ。その最悪の例が、11月末の感謝祭、そして12月末のクリスマス休暇だったのこと記憶に新しい。米国は休暇のたびに、感染状況を悪化させ、たくさんの命が奪われてきた。
今日はワクチンの接種が一般レベルで本格化してから、はじめての三連休だと思う。去年の同じ連休は、まだパンデミックとCOVIDの怖さを理解していない人々が、レジャーに繰り出しマスクもしないし、ソーシャルディスタンスもたもたずに、パーティをしている写真が問題になったものだ。
大人の75%がすでにワクチンを少なくとも1回は接種しているシリコンバレーの人々は、この三連休をどう過ごしているのだろう。ちなみに、私は三連休、家に閉じこもってガーデニングでもしようと思っていたのだが、友人家族から車で1時間ほどのサンタクルーズの桟橋での釣りに誘われた。ちなみに、家族以外と出かけるのは一年以上ぶりである。
ところで、パンデミックのさなか、釣りは楽しみやすいレジャーだ。桟橋で海風にふかれながら、互いの釣り糸が絡まないように、距離をあけて釣りをする。まさしくパンデミックにぴったりなレジャーだ。我が家も彼らの家も、大人はすでにワクチン完了済み、ティーンは一回目だけ終了しているという状態だった。ティーンことを考えて、一応大人もマスクをして釣りをすることにしたが、海風が冷たいために、マスクをしていても暑くない。
実は去年の今頃も同じ場所に釣りにきたのだが、そのときは家族だけだった。釣りをしてのんびりはしたけれど、お店で食べ物を買って食べたりするようなこともしなかった。しかし、ワクチン完了済みの今日は、同じことを同じようにしていても気分が全然違う。トイレに行くことに神経質になることもなかったし、お店でできたてのイカのフライやクラムチャウダーを買って釣りながら食べることも気にならなかった。そしてなにより、友人たちが周りにいた。ああ、これは昔の生活が帰ってきている。
マスクはしているものの、距離にはそれほどこだわらず普通に会話をしながらすごす時間。時々写真をとったりもして、これまでになく他人と時間を共有したりすると、もうこんなことができるんだとちょっと感動したりする。突然にして普通の生活が戻ってきたような気がした。まあ、普通と言っても、まだ「New Normal」ではあるんだけれど。それでも、感染する不安も、させる不安も極限まで落ちている今は、心はすでに普通の生活に戻っている。普通ってこんなに特別なことだったんだな。
サンタクルーズの桟橋を散策する人たちも、野外ということもあり、半分ぐらいの人はマスクをしていなかったけれど、残りの半分はマスクをしたままだった。そして、アイスクリーム屋にはいってみたら、店内は全員マスク着用という規制が守られていて、マスクをしないで入ってきてしまったお客さんに、店員がすばやくマスクをするように依頼していた。
今、シリコンバレーは、生活が普通に戻っていく過渡期だ。COVIDが存在するかぎり、完全にもとの生活にもどることはできないと思うけれども、それでもできることが一つ一つ増えていっていることを、この三連休で強く感じている。
カリフォルニアと銃
今日は姉妹サイトの「米国と銃」のフォローアップを更新しました。お時間のある方、お立ち寄りいただけると嬉しいです。
Vax Pot ワクチン宝くじ、きました!
本日、カリフォルニアのニューサム知事は、これまでにワクチン接種者に賞金を与える宝くじ方式を採用してきたいくつかの州に続き、カリフォルニア州でもワクチン宝くじを採用することを発表した。それもこれまでの最高賞金額で!
6月15日のフルオープンを目指すをカリフォルニア州は、ここ数週間ワクチン接種希望者の数が減ってきているのが悩みのタネだ。現時点で、約3千4百万人のワクチン接種可能な州民の63%がワクチンを接種していると言われているが、残りの1千2百万人の中のできるだけ多くの人に、6月15日までにワクチンを接種を急いでもらうための作戦として、宝くじ方式の採用を発表した。これまでに、オハイオ州での、接種者の中から一人、1百万ドルの賞金が当たるという発表をかわぎりに、コロラドとオレゴンでも同様に1百万ドルの賞金が発表されている。ニューヨークでは12歳から17才の接種者から抽選で50人に大学の奨学金を贈呈すると発表された。
これに続いて発表されたカリフォルニアの宝くじは。その金額と規模がすごい。6月15日をターゲットにしているので、賞金のすべてが6月15日を狙って設定されている。
一番の当たりくじは、フルオープン日の6月15日、その日までにワクチンを接種した州民の中から10人を抽選で選び、1人につき150万ドルの賞金を贈呈だ。日本円にして約1億5千万円の当たりが10本、賞金総額15億円というとんでもない金額をだしてきた。これは当たりたい。ちなみに、抽選はワクチン接種時の接種記録が州のデータベースに入力されているので、このデータベースから10人選ぶ。つまり、接種していれば、別途申込みは不要だ。
二番目の当たりくじは、6月4日と6月11日に抽選があり、1人5万ドル(日本円にして約500万円)が15人ずつ当たるというもの。なぜに2回にわけているのかといえば、なるべく早く接種すれば、抽選に参加できる回数が増えるため、早期接種を推奨するための作戦だ。
三番目はなんとくじですらない。5月27日以降にワクチンの接種をした先着200万人に50ドルのギフトカード贈呈だ。これはもらえる可能性が非常に高い。50ドルでもティーンエイジャーには相当に魅力的なはずで、明日以降、ワクチン接種会場に若い人が増える可能性は高い。
全部合わせて総額1億1600万ドル(日本円にして116億円)という、大盤振る舞いのカリフォルニア州ワクチン宝くじ、その名も 「Vax for the Win」。それほどまでに、州政府はフルオープンの6月15日までに、一人でも多くの人にワクチンを接種してもらいたいのだ。現状の63%をなんとかして、70%まで押し上げたい。先着200万人という数字はきっとここから来ている。だってあと200万人接種すれば、ほぼ70%を達成する。
70%ではたぶん集団免疫には足りない。足りないが、かなり近い線にいることは確かだ。その証拠に現在の63%でも、カリフォルニア州の百万人当たりの新規感染者数は非常に少なく、全米で一番低い。
ちなみに、このカリフォルニア州ワクチン宝くじ、12才以上はすべて参加者だ。ということは12歳に150万ドルが当たる可能性があるという夢のような話なのだが、我が家の人員は揃ってくじ運が悪いので、あまり期待できない。しかし、明後日に我が家のティーンはワクチン接種の予約が入っているので、どうやら50ドルのギフトカードは手に入れることができそうである。
米国と銃
今日はひさびさにパンデミックから離れたので、姉妹サイトのほうを更新しました。よろしければお立ち寄りください。
日本への渡航中止勧告について
今日は日本でも米国でも巷の話題になっているのは、米国が発表した日本への渡航勧告がレベル4、渡航中止に上がったことだと思う。
こりゃ大変だと、私も思ったし、日本でも、さぞやざわついたと思うのだが、よくよく調べてみると、世界249地域のうち米国がレベル4に設定している地域は、パンデミックになってからと言うものどんどん増え続け今や150地域以上ある、つまり多数派なのだった。つまり日本は、これまで上手に感染を抑えてきたので、そこを評価され少数派のレベル3だったのだが、最近の感染拡大により、多くのレベル4地域の仲間入りをしたということだった。
もちろん現在感染状況が深刻なインドやブラジルもレベル4だが、鎮まりつつあるヨーロッパの先進各国もレベル4だ。つまり、レベル4は幅が広い。
そして、渡航中止勧告についても、日本への渡航禁止か!と焦った人もいたかもしれないが、あくまでも勧告なので渡航禁止にはならない。じゃあ、一体渡航中止勧告ってどういうことなんだろうかと思って、ちょっと調べてみた。
単純にいうと、渡航中止勧告が出ている地域だと、米国民が旅行に行って、何か深刻な事態に陥ったとしても米国政府は助けてあげられないかもしれないですよ、ということらしい。例えば、突然オーバシュートが起こって、民間の飛行機が一切飛ばなくなったとしても、政府が飛行機を飛ばしてあげられるかどうかわからないからそういう国への旅行は避けてくださいね、という感じに受け取ればいいのかと思う。つまり、行きたいなら行けるけど、何も保証しませんよという感じだろうか。
なるほど。昔から、日本で渡航中止勧告が出ている国で日本人が事件に巻き込まれることなどがたまに起こって、どうやって行ったんだろうと思うことがあったが、そうか、つまり渡航中止勧告っていうのは、行こうと思えば別に普通に行けるんだなと、今日初めて学んだ。
それにしても、日本の感染拡大が続いているといっても、まだまだ多くの国よりも感染規模は小さいと思われるのに、このタイミングでレベル4を出したのは、やっぱりオリンピックと関係あるんじゃないかなと思う。夏休みがもうすぐ始まる米国では、ワクチンのおかげでバケーション気分が盛り上がってるだけあり、オリンピックもやるし、日本に旅行にでも行くかと考える米国人もいるかもしれない。それを見越して、先手を打って渡航中止勧告を出したのかもしれないなと思ったりする。
それにしても渡航中止勧告が出てるのに、米国の選手団は日本に行くのかとか、そういう問題が今後出てくるだろう。もしかして、先日IOCが涼しい顔をしてオリンピックは当然やりますみたいなことを言ったけれど、米国の渡航中止勧告はIOCに対するオリンピック中止のプレッシャーになるかもしれないなと思う。果たして、米国政府や企業が今オリンピックをやりたいのか、やりたくないのかは、さっぱり見当がつかないし、調べてもいないのだけれど、タイミング的には何か関係あるかもしれないなと思ったりもする。
この間ロイターか何かで読んだのだけれど、もしオリンピックが中止になった場合、様々な関連で物凄い金額の保険金が支払われなくてはならなくなるそうだ。その規模は世界的に巨額で、それもあってIOCはキャンセルできないという説もあるようだ。
その時同時に学んだのは、日本には中止する権利がないということだ。契約上、正式に中止を決定できるのはIOCだけだという。日本はなぜ中止しないんだろうと思っていたのだが、しないんじゃなくて、できないんだということを知って、すごく納得した。じゃあ、IOCがやるという限り、何がなんでも、どんな形式でもやるしかないんだな。まさかこんなことが起こるとは思わなかったとしても、それはなかなかに不公平な契約だなと思った。まあ、オリンピックの場合、開催国は「やらせてください!」と頼み込んでいる立場なのでそのような契約もアリなのだろう。でも、今回のパンデミック後はオリンピック開催国とIOCの契約条項が変わるかもしれない。
これまでオリンピックが中止になったのはいずれも戦争中だったそうだ。IOCも開催国も、戦争という事態は想像できても、今のような事態に陥ることは全く想像できなかっただろう。
このまま、観客も参加国も制限されざるえない状態でオリンピックが開催されたら、東京オリンピックは、ベルリンやワルシャワのように政治的ではないけれど、世界の不平等をあからさまにしてしまうような、いわく付き大会として不名誉なオリンピック史に残りそうだ。
子供にワクチンを接種させるのが不安な親の質問と回答
日に日に感染者が減っていくシリコンバレー、生活が徐々にもとに戻りつつある週末、恒例の朝市に野菜を買いに行った。CDCのワクチン接種者はマスクをしなくてもいいという発表もあったし、カリフォルニアは6月15日まではマスク規制を続けるけど野外ではマスクを強制していないという背景もあり、もしかしたらマスクしてない人がいっぱいるかもなあと思いつつ朝市会場まで車を走らせた。
しかし、朝の日差しがずらりと並ぶ白いテントにさんさんと降りそそぎ野菜や果物ががピカピカ輝く朝市場では、お店の人はもちろんあふれる買い物客も、先週同様、みんなちゃんとマスクをしていた。ほぼ100%のマスク着用率だ。シリコンバレー、すごいや、というのが正直な感想だ。
このあたりの16才以上の大人のワクチン接種率は75%を越えようとしている。つまり、この市場にいる人の約75%はすでにワクチンを少なくとも1回は接種済みだ。この地域が保持している低い感染率(0.8以下)と陽性率(0.6以下)のことを考えれば、自分の感染を心配をしている人は少ないだろう。でも、皆当然のように野外でもマスクをして買い物を楽しんでいる。まさしく、これはコミュニティの安全のため。偉い。改めてシリコンバレーを誇りにさせていただきます!
という話はおいておいて、今日は New York Times で子供にワクチンを接種させるのが不安な親の質問に答えるという形式の記事がのっていて、情報として非常にわかりやすかったので抜粋。もちろんメディアというのは、発行元によって視点が違うので、ここに書いてあることがすべてが真実かどうかは、読み手の判断に任せようと思う。
これまで、この日記で書いたことのある情報は繰り返しになるので割愛する。
ほかの予防注射(水疱瘡など)をしたばかりの子供は、COVIDのワクチン接種を待つべきですか?
CDCは最近ガイドラインを変えて、ほかの予防注射とCOVIDのワクチンの接種時期を特に考慮する必要はないとしている。この方針は American Academy of Pediatrics からもサポートされているので、特に気にする必要はないらしい。
子供の副反応と大人の副反応に差異はありますか?
現時点では、子供のほうが若干発熱する確率が高いことはわかっているが、それ以外の短期間の副反応はほぼ大人と変わらない。
アレルギーのある子供もワクチンを接種できますか?
これまでに深刻なアレルギー反応(アナフェラキーショックのようなもの)を経験したことのある子供は、ワクチンを接種しないほうがよい場合もある。また、このリンク先にはワクチンの原材料が記載されているので、これらの物質にアレルギーがあるとわかっている場合は、ワクチンは接種しないほうがよいこともある (専門家じゃないとこのリストされている物質がよくわからないけどね)。これらの場合は、かかりつけの小児科医と相談すること。
学校がワクチンの接種を強制する可能性がありますか?
学校が私立か公立かによる。私立であれば、その学校の方針で決まる。大学の場合、現時点で100校を超える大学が秋からの新学期にキャンパスに戻るにはワクチンの接種を条件としている。高校生以下の場合、公立学校では州の方針が通常左右することになる。現時点ではCOVIDワクチンについては、どの州もガイドラインをだしていないが、通常米国の公立校には登録する時に接種済みでなくてはいけない予防注射のリストというものがある。そこにCOVIDのワクチンが追加されるかどうかは、今後の州の方針による。ちなみに、これらの従来必須である予防注射(いわゆる麻疹など予防注射)でも、接種しなくても公立校に参加することのできる特例処置を設けている州もある。宗教上の理由によりワクチンを接種しなくても公立学校への参加を認めている州は米国50州のうち44州である。また、親の方針によりワクチンを接種しなくても公立校への参加を認めている州は15州ある。「States With Religious and Philosophical Exemptions From School Immunization Requirements」を参照。ちなみにカリフォルニア州はどちらも認めていない。
mRNA ワクチンの仕組みを教えて下さい。
これは前にもこの日記に書いたけれど、今回の記事の説明がわかりやすいので、もう一度簡単に説明。
mRNA技術はガンのような免疫系の病気の治療法としてすでに15年ほど研究されているが、ワクチンとして使われるのは今回がはじめてである。mRNA技術がワクチンとして使用されるのははじめてであるが、mRNA分子というのは人間の体に普通に存在している分子である。例えば、子供の体には20万個以上の mRNA分子がすでに存在している。体のそれぞれのセルが mRNAを持っており、それによりプロテインを作成するなど生きていくために不可欠な活動の一部を担っている。これまで聞いたことがなかったというだけで、ヘモグロビンとかインスリンのように普通に体を構成しているよく知られているプロテインとまったく同じように、通常の体を構成しているプロテインである。
このワクチンは、このmRNA分子を、体のセルの溶け込ませるために油性の泡に入れてパッケージしている。この分子を受け取ったセルは、mRNAに入っているスパイクプロテインを作成するためのインストラクションに従って、スパイクプロテインを作り出す。免疫システムは、スパイクプロテインが作成されたことを素早く認知し、この外からやってきた侵略者に攻撃を開始する(これが腕の痛みや発熱のような短期の副反応の原因である)。この一連のプロセスにより、体内の免疫システムはスパイクプロテインの存在とその戦い方を学ぶので、実際にCOVIDが体内に入ったときに訓練に基づいて素早く始末してくれるというわけだ。
子供にもわかるように書いてあるので、すごくわかりやすいな。
そして、誰もが注目である質問。ワクチンの長期的な影響の可能性について教えて下さい。
新しい技術ということで、不安に感じる人々が多いのは当然であるが、mRNAワクチンというのは、自然界で人間の体に起こるプロセスを模倣しているだけだということを理解する必要がある。開発者たちは、その技術的根拠から、このワクチンが世間で噂されているような不妊や思春期になんらかの影響を与えるということは、論理的にまったく考えられないと報告している。なんらかの副反応というのは、技術の中にその可能性が含まれていなくてはならないが、現在噂されている長期的な影響のどれもがそのような可能性の根拠を持っていない。また、脳細胞に影響を与えるという噂も流れているが、そもそも人間の脳というのはプロテインの侵入を防ぐようにできているため、そもそも免疫学そのものから保護されたエリアであるということを知っておくといいそうだ。
ちなみにmRNAワクチンはその任務の性質上、免疫システムに攻撃し破壊されるので、体に長期に残ることはない。
COVIDが子供にとってリスクが低いことはよく知られているが、それならばワクチンを接種する必要はないのでは?
確かにリスクは低い。低いが全米で4百万人の子供が陽性と判断され300人が亡くなっていることを忘れてはならない。つまりリスクは低いがゼロではない。たとえば、毎年インフルエンザで亡くなる子供は50人から150人の間だといわれている。水疱瘡でなくなる子供は100人前後だそうだ。これとくらべて、COVIDのリスクは高いのか低いのか、親はよく考えてほしい。ある医者が言っていた。
「もし子供にワクチンを接種させるかどうか迷っている親が相談しに来たら、彼らにCOVID病棟を見学させたい。この病気がどんなものなのかを実際に目にすれば、すぐにワクチンを接種させる気になると思う」
重い言葉だ。
次の作戦はデートアプリ?!
連邦政府も州政府も郡や市の保健局も、なんとしてでも人々にワクチンを接種してもらおうと実にいろいろな作戦を展開している。アクセスしやすい場所に朝から晩までポップアップの接種サイトを置くことにより、通勤途中でも接種できるようにしたり、予約無しでいつでも接種できるとか、学校に接種サイトをおいて周辺地域の住民に集まってもらおうとしたりしている。
オハイオ州では、とうとうワクチン接種者に賞金があたる宝くじ策まででてきたし、現在、シリコンバレーのあるサンタクララ郡ではなかなか接種が進まない若者に対象に、イベント形式で盛り上げたり、プレゼント贈呈方式がよく使われている。 ギフトはスタバのギフトカードだったり、タピオカティーだったり、実に様々だ。
民間企業も実に積極的で、接種者にビールやドーナツなど自社製品ををプレゼントして会社の存在をアピールしつつ接種をよびかけていたりして、まあ真面目に探せばいといろ出てくる
そして、今度はなんと、ホワイトハウス、つまり現政権が主導する形で、なんとデートアプリの個人プロファイルにワクチン接種済みかどうかを記録する試みが進んでいる。冗談ではない。本当にホワイトハウスと米国の大手デートアプリ会社が協力して、ワクチン接種済み属性を個人プロファイルに追加できるようにアプリをアップデート中だ。アプリによっては、ワクチン接種済みフィルタをかけることもでき、ワクチン接種済みの人だけフィルタして、そこからデート相手を選ぶこともできるようにするらしい。
実際のところ、デートアプリ会社のアンケートによると、ワクチン接種済みのユーザの多くはワクチン接種済みのデート相手を探していると答えているそうで、需要はしっかりありそうだ。実際のユーザにインタビューしたところ、「自分はワクチンを接種していることもあるし、一緒にデートをすることを考えれば、ワクチン接種済みの人が良いと思うので、賢いアイデアだと思うなあ。」などと語っていた。
もちろん、「ワクチンを接種していないという理由だけで、私のプロファイルがスキップされるとなると、あまり公正ではないような気がするわ」という意見のユーザもいるが、それは個人のチョイスなのでしょうがないともいえる。
つまり、ワクチンを接種すれば、安全なだけでなくより楽しい生活が待っていますよという、若者にわかりやすいアピールの1つであり、これにより若者のワクチンの接種率を伸ばそうという新たな作戦だ。米国のワクチンの接種を促す「釣り方」は、まったくもってあからさまで、釣りであることを隠そうともしないのが、かえって潔いともいえる。
米国は統一したワクチンパスポートを導入しない方針だ。そこで、ワクチンパスポートを導入しなくても安全な生活が戻ってくるのかどうかを心配している国民も多い。しかし、先日ファウチ博士がインタビューで答えていたのだが、政府主導の公式ワクチンパスポートを導入しなくても、民間や団体が似たようなことを押し勧めていくだろうというのが、専門家の見立てだ。
たとえば、すでに大学ではワクチン接種済みの学生しかキャンパスでの授業に参加できないと発表したところも多い。このような形で、教育、レジャー、イベント関連の民間組織が、それぞれの地域の感染状態に合わせて適切な安全ルールを設けるようになるだろうし、そのように運べば、国で統一したワクチンパスポートを導入しなくても、感染防止を制御できるだろうということらしい。
このデートアプリもその一環なのだ。ワクチンを接種していなくてもデートアプリには登録できるけれど、よりたくさんの出会いの機会がほしかったらワクチン接種すればいい。
こんなことまで、民間や地方自治の運営と制御にまかせるところは米国らしいと思う。それも、ホワイトハウス(政権)が民間企業に提案(お願い)してすすめているというところが、なんとも珍妙で面白い。こういう時に、この国のフットワークの軽さと国としての民間企業への信頼の厚さを再認識したりする。