シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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感染対策の行方を決定する選挙(ティア2)

トランプ大統領がウィルスに感染する前から、パンデミック対策は大統領選挙の重大な論点の一つだった。しかし、彼がウィルスに感染し、入院し、回復した今、ウィルス対策はこれまでよりも更に重要な論点となった。この選挙の結果は米国民が、今回のウィルスに対してどう考えているかの表明となり、選挙後の感染対策の行方を決定することになりそうだ。

トランプ大統領とその側近たちが次々と感染し、その前後の経緯や現在の対応をみれば、彼らが今回のウィルスについてどのように考えているのかが、より明確になったような気がする。感染する前は、感染対策もしっかりとやってきたと主張してきた彼らだが、感染した後は、感染しても深刻な問題ではないという態度を明確にちらつかせるようになった。

今回のウィルスはインフルエンザと同じようなものだと主張したり、回復したあとは以前よりもよくなったと発言したり、ウィルスを恐れるなと支配されるなと呼びかけたりしている。また、感染が判明して隔離されている報道官が「I feel great」と発言していた。たとえ無症状でも、ウィルスに感染して隔離されている人間が「feel great」はないだろう。「I feel good」か「I experence no symptom」ぐらいが妥当だ。悪い冗談かと思わず笑った。

また、8人以上の感染者が発表されてスーパスプレッダーイベントと見なされているホワイトハウスのイベントの出席者に対して、ホワイトハウスからのコンタクトトレースはほぼ行われていないことがわかっている。コンタクトトレースは、感染拡大を食い止めるための最も有効な武器だといわれているのだが、このイベントに出席した200人近い人々もその前後の別のイベントに出席した人々も、その多くがホワイトハウスからコンタクトトレースの連絡を受けていないと応えている。コンタクトトレースを受けていなくても、自らテストを受けて自主隔離に入っている人もいれば、「ウィルスを恐れていないので」とテストをうけずに普通に(New Normal ではなくてほんとうの意味の普通)過ごしている人もいる。

これらのことから、ホワイトハウスとその周辺の多くの人々が、このウィルスに対する感染拡大防止の努力は必要ないと考えいることが検知できる。実際のところ、どういう風に捉えているのかは彼らが本心を語らない限り確信しようがないけれど、彼らを軸にクラスタが広がっている現状も、たいした問題ではないと捉えているのはほぼ間違いない。すでに20万人以上の米国人の命を奪っているこのウィルスであるが、彼らの見解では、インフルエンザと対して違わず、経済を犠牲にするほど深刻ではないと捉えられている。

これは、命と経済の天秤だ。これだけ聞いたら、誰もが命のほうが大切に決まっていると応えるだろう。しかし、経済の大打撃によりビジネスを失ったり、失う寸前の人々にとっては、そんなに単純な問題ではない。感染から逃れて命が助かっても、経済的な死を迎えて自殺に追い込まれるようなことになれば意味がない。そういう視点で見ると、倫理的には認めがたいこの天秤であっても、簡単に批判するわけにはいかない。命も大事、経済も大事、そのバランスをどう取るかが、今回の選挙戦の核になる。

天秤と書いたけれども、感染防止の努力をすることと、経済を廻し続けることは、必ずしも正反対の結果を描くわけではない。最大限の結果にこだわらないならば、ある程度経済を廻しながらも、他人に感染させない努力をすることはできる。

ところで、感染防止に無頓着になることでウィルスを蔓延させた場合、インフルエンザの5倍も10倍もの犠牲者をだすと考えられているCovidの犠牲者は、主に社会的弱者であることは統計が証明している。ホワイトハウスがやっていることは、単純な見方をすれば、経済活動を救うために社会的弱者を切り捨てているという政策だ。

一方、もう一人の候補者であるバイデン元副大統領は、感染対策に対して明確な違いを打ち出している。彼は、可能な限りマスクをして行動し、支持者からも距離を取り続けている。集会はパーキング形式で、支持者たちは、大きな駐車場に車を止め、車から前方ステージに立ったバイデン候補が映っている大画面をみている。バイデン氏に質問するときもステージにはあがらず、遠くからマイクで質問をする形式だ。取られている距離は半端ない。

あれだけ気をつけていれば、高齢のバイデン候補だがウィルスに感染する確率は低そうだ。彼がむしろ過剰なまでにマスクの着用やソーシャルディスタンスをとるのは、彼が単純に感染を恐れているからではなくて、彼が大統領になったときに行う予定の感染対策の見本をみせようとしているのだ。彼は常に、科学者や医療関係者が勧めている方法で皆が協力してウィルスから米国を守ろうと何度も発言している。

もしこの大統領選挙でトランプ大統領が再選されれば、感染対策は今よりもさらに緩くなり、ワクチンを待っている間も、パンデミック以前のように普通に暮らすことが促されるだろう。普通の暮らしの中で感染は広がり、それに感染して重症化した人は運が悪かったと言われる社会だ。感染したくないなら、自己責任で気をつけてくださいという社会だ。

一方、バイデン候補が勝てば、感染対策は明らかに今よりも厳しくなり、ワクチンを待っている間、少し窮屈なNew Normalなルールの中でなるべく感染を広げないようにする、社会的な努力で犠牲者の数を最低限に押させましょうという社会を目指すと思われる。

米国民は、今回の選挙で、どちらの体制でパンデミックを乗り越えるのかを尋ねられているようなものだ。社会の犠牲の上に成り立つ個人の追求なのか、個人の忍耐の上に成り立つ寛容な社会なのか。米国の行く末を決める選挙戦となる。

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