シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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偽ワクチン接種カード

最近話題になっているのはワクチンの接種を証明できるカードの偽物があちこちのオンラインで販売されていることだ。

CDC発行の接種カードはごく普通の紙でできた記録用カードでしかなく、普通にコピーして偽造することができる。無記載のカードを偽造して自分で勝手に記載することもできるし、SNSで公開されているカードとともに微笑んでいる写真を参考にして、その人物の名前と生年月日と接種日や場所まで丸ごと偽造することもできる。丸ごと偽造すれば、州政府のどこかにある接種記録とも合致してしまう。

なんでそんなことをするのかといえば、理由はいくつかある。

一番顕著な理由はワクチンの接種の有無で行動が制限される可能性があるからだ。現時点では明確にそのようなルールを打ち出しているところはない。なにせ、まだ国民の20%しか接種済みではないし、皆が接種順番を待っている状態だからだ。しかし、一度全員に行き渡るようになれば、コンサートやスポーツ観戦などの大型イベントや交通機関の利用の際に、ワクチンの接種を条件とするルールが登場する可能性はある。これまでもこの日記に何度か登場した「ワクチンパスポート」の発想である。しかし、世の中にはワクチンの接種を拒否する人が一定数いるため、これらの人たちが近い将来行動が制限されるのを杞憂して、偽造ワクチン接種カードを販売したり購入したりしているのだ。

それ以外にも、なんと無記載のカードを買って、2回接種のうちの1回目の接種の記録を偽造し、2回目を接種しなくてはすぐに期限が切れてしまうふりをして、優先的に最初のワクチンの接種を受けようとする人もいるという。なんとも呆れた話だ。

偽カードの値段は安いものは20ドルに始まり50ドルぐらいまでだそうで、金儲けにやっている人もいれば、ワクチン接種反対運動の一環としてやっている人もいるというなんとも複雑な話である。

どちらにせよ、CDC発行の偽のワクチン接種カードを売っても買っても、CDCの公文書偽造、著作権侵害、個人情報窃盗、詐欺など、ありとあらゆる犯罪を犯すことになるのは知っておいたほうがいい。特にCDCに関するものは連邦犯罪なので、FBI案件だ。ちょっと気軽に小遣い稼ぎなんてレベルの犯罪ではないことを知っておくべきだし、作るのはもちろんだが、持っていることも罪になるので、冗談でも買うべきではない。また、他人のカードを拝借して用を済ますということも絶対にしてはならない。

紙幣のように透かしが入っているわけでも、特別なインクが使ってあるわけでもない。ただの紙のカード故に、偽カードの浸透はあっという間だし、回避できるとも思えない。だからこそ、連邦政府や国際機関がセキュリティが高く標準化されたワクチンパスポートの検討をしているのだろう。それはアプリケーションのようなものかもしれないし、もっと偽造されにくい電子カードのようなものになるかもしれないが、なにかしら今の普通の紙のカードとは別のものを考えているだろう。

実際、将来、ワクチンパスポートが必要になるかならないかは、現時点では答えが難しい。たとえば、米国でワクチンを接種して日本に旅行した場合、ワクチン接種済みの人は日本での2週間の自主隔離をスキップできるとしよう。さて、どうやってワクチン接種済みであることを証明すればいいのか。CDC発行のワクチンカードはあくまでも米国でワクチンの接種を証明するものだ。国際的に通用するものではない。その上、偽物が簡単に出回っているものとなれば、証明することはいよいよ困難だ。となると、やっぱりワクチンを接種していようがいまいが、自主隔離を行わなくてはいけないということになってしまう。

つまり、ワクチンパスポートが本当の意味で機能するには、国際的に標準化されていて、かつ、偽造されにくいことが条件となる。アプリもハックされる可能性考えると厳重なセキュリティが必要だし、もしかすると実際のパスポートのように電子カードが必要になるのかもしれない。そう考えると、この仕組は思ったよりも相当大掛かりなものになるために、短期間で実現できるようにも思えない。

イスラエルでは電話のアプリでワクチンの接種証明ができるようになっているというニュースをみたが、イスラエルのような人口が少ない特殊国家であれば、国内ではそのようなことが可能なのかもしれないが、国際的にはそれぞれの国や民族の利害関係が絡み合う昨今、そのような仕組みが簡単には構築できないのは想像できる。

だからこそ、「パスポート」という呼び名がついているのだろう。やるならば本物のパスポートぐらい徹底してやらなければ、あっという間に様々な犯罪組織に利用されてしまう可能性がある。

今後いったいどのような展開をだどるのか、未だにまったく予想がつかないが、一つだけ確かなことがある。これ以上、世界の混乱を招きたくないならば、自分の接種カードを持っている人はその写真をSNSに公開しないこと。なくさないように大事にしまっておき、人に貸したりしないこと。そして、当然だけれど、偽造カードを売ったり買ったりしないことだ。

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