PASC ってなんだ?
PASC は Post-Acute Sequelae of Covid-19 の略、無理に日本語にするなら「Covid-19 急性期後後遺症」とでもなるだろう。ここ数ヶ月の間、何度もニュースになってはいたが、とうとう正式名称を与えられた Covid 回復後長期に渡り体調不良が続くという症状である。
何度もニュースで読んでいるにもかかわらず、一度も日記に登場したことがなかったのには理由がある。ニュースを読む限り、間違いなく存在している病気のようなのだが、こんな症状、あんな症状といった具合に、はっきり定義されないで、具体的な事例だけがニュースになるために、実にとらえどころがない感じだったのだ。
やっぱり正式な病名をつけることは大切だ。今週の水曜日にファウチ博士が正式名称を発表し、現在判明しているデータを元にすると感染者の30%が発症しているという報告をした。これで日記に書ける正式な病気になった。名前って大切だ。
実は患者にとっても、正式名称はとても大切だと、現在進行系でこの症状に悩まされている患者が語っている。今回正式に発表されるまでは、どんなに症状を訴えても、精神的なものなのではないかとか、ノイローゼ気味なんじゃないかとか、まともに扱ってくれないような周囲の人々の反応があったのだそうだ。が、これで正式に病として認知されることになってストレスが少し減ったという。なるほど、ただでさえ体調が悪いのに、それを認めてもらえないのは確かに辛い。そういう人たちのためにも、今回の命名には意味がある。
さて、PASC にはどんな症状があるのかというと、これがまた、多岐に渡っている。一番多いのは倦怠感だが、それ以外にも、関節痛、咳、胸の痛み、思考と記憶力と集中力の減退、息切れ、動機、頭痛、不眠、不安、鬱など、とにかく体の調子が悪いときに現れる一般的な症状は何でもありだ。COVIDから回復したにもかかわらず、一ヶ月以上このような不調が続く場合 PASC と診断される。長い場合は9ヶ月に渡って不調が続くこともあり、仕事を継続できなくなったり、日々の生活にも支障が出ている人も少なくない。症状が重い場合、何ヶ月も寝室からでることができない人もいる。
どのような人が PASC にかかるのかというと、これがまた現在のところはっきりとした傾向がわかっていない。わかっていることといえば、女性の患者が多いこと、多くの患者はCOVIDに感染する前は非常に健康であったこと、年配の患者のほうが多いが若い患者でも発症しているなど、実に漠然とした傾向しかわかっていない。もちろん原因も未だによくわからず、現在大型予算を割いて研究中だ。
このような深刻な後遺症に感染者の30%がかかっていることを考えれば、いかに若い人々の間では深刻な症状がでるリスクが低い感染症とはいえ、免疫をつくるために故意に感染しようとか、感染により集団免疫を確立しようという考えが、いかに危険な発想であったかが次第に明らかになってきている。
PASC の事例を読めば読むほど、感染したくないと思う。一般的に言えば、感染して重症化するリスクは高くない私だが、PASC にかかるリスクはごく普通にある。通常、週末もまともに休めないほど仕事が忙しいのに、数週間から数ヶ月も、こんな辛そうな後遺症に悩まされたら、うちの小さな会社が潰れてしまう。
何ヶ月も、今も、PASC に悩まされている人々に心から同情しつつ、いよいよ感染防止のための努力を継続するぞと、意志を新たにした次第である。