シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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400,000 人に追悼を

今日一番印象的だったのは、やはりリンカーンメモリアルで行われたCOVIDの犠牲者に捧げる追悼式だった。

明日の就任式を控えたワシントンが、従来であればお祭り騒ぎがあってもおかしくない就任式の前夜に催したのは40万人の犠牲者に捧げる追悼式だった。これだけ多くの感染者と犠牲者を出している米国であるが、実はこれが初の公式な犠牲者への追悼となる。米国がロックダウンに入った去年の3月から今まで政情は混乱していた。ウィルスの驚異と犠牲から目をそらして続けた政権主導のもと、沢山の人が亡くなっていることはニュースになっていたけれども、それはマスコミが取り上げていただけで、政府としては一度も犠牲者への追悼を正式に取り上げたことはなかったと思う。

今日、厳戒態勢がしかれた首都ワシントンで、当然、無観客で、静まり返った薄暗い夕暮れのリンカーンメモリアル前の噴水に本当にわずか数人が立ち尽くした。

明日就任を迎えるバイデン次期大統領とその夫人、ハリス次期副大統領とその夫君、そして、祈りを捧げる牧師、歌を捧げた2人の女性、それだけだった。後は進行スタッフらしき人が数人いただけだった。もちろんまわりにはたくさんの護衛がいたと思うけれども、彼らはカメラには映らなかった。

ひっそりとしたリンカーンメモリアルの夕暮れ、牧師の祈りが捧げられ、ハリス氏がこれまで個々が悲しんできた悲しみを今日は皆で悲しもうという言葉に続いて、有る女性が「アメージング・グレースを」歌った。彼女はシカゴ近郊の病院の看護婦だ。数ヶ月前、彼女が病院で歌うアメージング・グレースの動画がSNSで拡散され、沢山の人の心をうった。プロの歌手ではなく一般人の彼女が招かれて歌っているところが、バイデン政権らしい追悼式だった。いい意味で地味だ。一流の歌手と比べれば話題性も華やかさもないが、彼女が実際に患者の命を見つめてきた看護婦であるという事実が、彼女の歌を特別なものにしていた。

その後、バイデン氏が短いスピーチをした。最初に歌い終えた看護婦に手厚いお礼をいい、米国のすべての看護婦たちにお礼をいい、そして、この悲しみを覚えていようと語り始めた。亡くなった人たちを覚えていようと言う言葉で短い短いスピーチをおえると、噴水を囲んで立っている灯籠のような明かりが無数に灯った。夕暮れに灯る明かりが噴水に映り込み静寂が流れる。そして、ゴスペル歌手が「ハレルヤ」を歌い、追悼式は終わった。時間にして20分ほどの、地味でひっそりとした、けれど印象的な追悼式だった。

歌を歌った2人の女性はどちらも黒人だった。そして、ハリス次期副大統領も黒人とインド系のルーツを持っている。ほんの数人のその場にいた人の半数が有色人種で女性だったということも印象的だった。この数年間、連邦政府の集まりは、その過半数は白人だった。いよいよ、政権が変わることが象徴的な追悼式だったと思う。

そのようは政治的なメッセージが隠されていたことを考慮したとしても、あの追悼式は心にしみた。家族を亡くした人々の悲しみが、亡くなった人たちの苦しみが、初めて公式となり慰めの歌が捧げられた。家族たちはあの灯籠を見て涙を流したにちがいない。

その後、教会の鐘が40万人のために400回、人影のないワシントンの夜に響き渡ったそうだ。

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