夜間外出禁止令の発令（パープルティア）
ほんの1ヶ月ほど前までは、米国全体の新規感染者数の大幅な増加データを眺めながら、カリフォルニアの数値が非常に低く留まり続けていることに安心して、カリフォルニアの規制緩和システムはうまく動いているなあと感心していた（「ヨーロッパも第二波」を参照）。その4日後、10月末ぐらいから徐々に雲行きが怪しくなり（「はずれてほしい予感」）、先週からは明確に、そして急速に、カリフォルニアの新規感染者数は拡大し鋭角的な急上昇を示している（「エピデミック史上最も暗い期間がやってくるらしい」）。
10月半ばまで、私が規制緩和システムがうまく動いていたと思ったのは、全くの勘違いだったのだろうか。いやいや、確かに10月半ばまで上手く機能しているようのに見えた。この1ヶ月の間に、一体何があった？カレンダーを睨みながら、過去数週間のニュースや自分の日記を読み返しながら、いろんな可能性を考えてみたけれど、結局私が個人的にたどり着いた結論は「気候」だった。
現在のカリフォルニアの感染拡大をリードし始めたのは、これまでカリフォルニアで比較的感染者が少なかった田舎の郡だったのだが、その位置は全てカリフォルニアの最北部か東部に位置している。カリフォルニア最北部は当然ながら、それ以外の地域よりも早く寒くなる。また、東部はシェラネバダ山脈の上の方に位置するため、冬には雪が降るような場所であり、やはりほかの地域く比べて早く寒くなる場所なのだ。
これらの場所は人口が少ないために、これまで感染者が非常に少なかった。しかし、気候が寒くなり、アウトドアで過ごすことができなくなった人々が、室内で過ごすようになった途端に、アウトブレイクが始まったのだと思う。
そして、それに遅れて秋が深まってきたシリコンバレー周辺も、徐々に徐々に冷え込んできて、とうとう室内の暖房のスイッチが入るようになった頃から、シリコンバレー周辺の郡で新規感染者が増え始めた。やはり、アウトドアで過ごしてきたことを、室内に移動したタイミングだと思う。
これが偶然の一致とは思えないので、やはり「気候が寒くなるのに伴う室内でのアクティビティの増加」は、このアウトブレイクの大きなファクタであることは間違いない。多分、夏の間だって人々はあちらこちらで集まっていたのだろう。が、気候と自然に恵まれたカリフォルニアは、夏の間はアウトドアで過ごすのが気持ちがいい土地柄だ。感染拡大を防ぐためにアクティビティはアウトドアにしてくださいね、と言われても州民にはなんの問題もなかったのだ。
ところが一旦寒くなってくると、アクティビティは室内に移動する。室内に移動しなくてはいけなくなったからと言って、突然にして集まるのをやめることもできずに、人々は引き続き室内で集まったのだろう。これに伴い、途端に感染は広がりだした。そもそも、ウィルスは寒さと暖房による乾燥が大好きだ。それに加えて、部屋を温めるために換気が制限されている室内に人々が集まっておしゃべりをしたり笑ったりする。その結果が、今の状態なのだろう。
この急傾斜の上昇をなんとかして再び止めなければならない。そこで、本日、ニューサム州知事はカリフォルニア州のパープルティアに属している全ての州に対して夜間外出禁止令を発令した。3月のロックダウンほど厳しくはないが、一部的なロックダウン（ちなみに、現地ではロックダウンという言葉は意図的に避けられ、シェルターインプレイスまたはステイアットホームと呼ばれる）が発動された。
しかし、この夜間外出禁止令が、私の独断と偏見によると、「ぬるい」のである。夜間の10時から朝5時の間、必要なビジネスやアクティビティ以外の外出を禁止するというものだが、つまり、日中、朝の5時から夜の10時までは通常のパープルティアの規制のままである。これまで、バーや人の家で夜通し飲んで騒いでいた人には効果があるが、そういう人は多分あまり多くない。友達や親戚と、ちょっと一杯や軽くランチでもと集まっていた人たちにとっては、全く規制強化にならないのだ。
今日のニュース番組で、アナウンサーから、この夜間禁止令が現状にどれくらい効果があると思うか、と聞かれた医師は、あまり期待できないと語っていた。それよりも、これまで何度も言われてきたように、基本的な感染防止策である、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、定期的な手洗い、そして何よりも、可能な限り自分の家に留まることが、この拡大を止めるのに何よりも効果があるだろうと言っていた。
そう、多分、我々に必要なのは、ロックダウンが始まった3月の頃の、初心に帰ることなのだ。3月も今と同じくらい寒かった。アウトドアで人が集まるには寒すぎた。だから、多くの人々は、ほかの人には会わずに、自分の家に家族と留まって、必要以上のの外出を昼でも夜でもしなかった。今、我々に必要なのは、自粛疲れの中でどこかに忘れてきてしまった1人でも多くの人を感染から救おうと考えたり、最前線で戦う医療関係者たちをサポートしよう思っていた、あの心がけなのだ。
もちろん夜間外出禁止令は意味がある。しかし、その本当の意味は、夜間外出禁止令が必要な事態になっていることに気づかせることによって、州民の緊張が高まり、あの3月のロックダウン当初に私たちを支えた強い意思と初心を、コミュニティに取り戻させることだ。
