シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

姉妹サイト「シリコンバレーをよむ」もぜひご訪問ください

バーチャルパーティ(規制緩和フェーズ2)

遠方の友人や家族とオンラインお茶会や飲み会をすることはパンデミックの前だって技術的には可能だった。でも、やっている人は少なかった。1対1のテレビ電話形式の通信は使っていた人がいただろうが、複数の拠点からバーチャル空間につなげるパーティ形式のものをやっていた人は、ほぼいなかったんじゃないだろうか。

社会一般的には、この技術は結構以前から使われていた。仕事の会議や講習会やオンラインスクールなどである。ただ、このような生産性の高い活動に使われるバーチャルミーティングシステムは、やはりそれなりにお値段がする。それだけのお金を払ってお茶会だの飲み会だのパーティだのをバーチャル空間で開こうとだれも思わなかっただけだ。

パンデミックにより多くの場所で、人々の往来が難しくなった昨今、このバーチャル空間で集まるシステムの需要が急速に高まった。もちろんオンライン会議や顧客との打ち合わせのような、ビジネスに関係する需要が非常に伸びている。しかしそれだけではない。家に閉じ込められてしまった一般の人たちも、別の家に閉じ込められている人たちと集まって、話して、笑って、楽しい時を過ごしたいという需要が一気に高まったのだ。

仕事で使うわけではないし、わいわいと騒ぐだけであれば、セキュリティと比例してお値段が高くなるフォーマルな会議システムは必要ない。というわけで、あちこちでカジュアルなバーチャルミーティングシステムが立ち上がった。ほとんどは前からあったサービスが無料化されたり、拡張されたりしたもので、技術的にはまったく新しくないのだが、これを使ってくだらない時間をすごすところが新しいのだ。

そこで、ざくっと勝手にバーチャルミーティングサービス比較をしてみよう。現在、代表する無料のバーチャルミーティングサービスと言えば、Zoom、Google Hundout、Google Meet、Facebook Messanger, Facebook Messanger Rooms、Line などが挙げられる。私はLineを使っていないので、残念ながら比較はできない。使っている人、比較してみてください。

まずZoomから。ロックダウンによって一気に名をあげたのがZoomである。「Zoomする」という動詞が生まれたほどだ。基本的に有料サービスだが、40分だけなら無料でも使える。問題は、バーチャルパーティとは通常お茶を飲んだりお酒を飲んだりしながら、だらだらまったりするものので、40分で終わることはまずない。この時間制限さえなければZoomの多機能はすばらしい。画面は何分割もできるし、もちろん画面共有もできるし、画質も音質も文句なし。その上、背景をすりかえるとか、肌をきれいに見せるというような、なくてもよいような機能までついていて面白い。カリフォルニアのオンラインスクールはZoomを使うことが多いが、我が家のティーンエイジャーがニキビを消して授業に参加できると笑っていた。若者にはたぶん必要ないけど、私には結構魅力的な機能だ。

次はGoogle。Google Hungoutは前から無料で誰でも使えるミーティングシステムだった。若者のグループチャットの形では、ロックダウン前からすでに使われていたのではないかと思う。初めて使ったときは便利だなと思ったのだが、使い続けてわかってきたHungoutの問題点は、画面を等分分割ができないため、自動的に話している人にフォーカスが移動するのを受け入れるか、自分でクリックすることでフォーカスを変えなくてはいけない。これは結構落ち着かない。

さて、Googleはロックダウンをうけて、有料サービスだったGoogle Hungout の企業版 Google Meet の無料化に踏み切った。Hungout に比べて等分分割を始め画面レイアウトが柔軟になり機能が増えているところが特徴だ。ためしに仕事とプライベートの両方で使ってみたのだが、画質が粗いなという印象だった。また、コンピュータを使っている私には特に困ったことはなかったのだが、通信デバイスがスマホの場合、画面の等分分割ができないらしく、話す人に自動フォーカスされるスタイルになっていて、複数の人間と話すには使いにくいと通信相手がコメントしていた。

次にFacebook。いろんなバージョンがあって複雑なのだが、まずFacebook Messenger のビデオグループチャット。これもロックダウン前からあった機能で、画面の等分分割も可能で画像も音声も非常にクリアだ。ただし、Facebook のアカウントを持っていないと使えない。

Facebook もロックダウンを受けて、Messenger のビデオチャット機能を拡張したMessenger Roomsという機能を無料提供した。実はつい最近学んだのだが、どうやら2種類あるらしい。Facebookから起動するMessenger RoomsとFacebook Messenger から起動するMessenger Roomsだ。

この2つは同じ機能だと思っていたのだが、実は違った。Facebookから起動するMessenger RoomsはFacebookのタイムラインにビデオチャットができるバーチャル空間を公開できる機能で、基本的にFacebookのアカウントを持っているユーザのために作られている。たとえば、タイムラインにMessenger Roomsを友達限定で公開すると、暇なFacebook友達が入ってきておしゃべりできたりする。そんな風にも使えるFacebook内で閉じたサービスだ。

Facebook Messenger から起動するMessenger Roomsの大きな特徴はミーティングを始めた人がFacebookユーザであれば、残りの参加者はFacebookのアカウントを持っていなくても参加できるようになることだ。実はこれはバーチャルミーティングでは大きい。通常、参加者全員が同じサービスのアカウントを持っていることは少ない。ミーティングを企画するたびに参加者にサービスのアカウントを作ってもらわなくてはいけないとなると、アカウントを作るのを躊躇する参加者もいるだろう。アカウントを持っていなくても気軽に参加できるフットワークの軽さは大いに評価できる。コンピュータとスマホの両方で画面の等分分割も可能で画質も音質もよい。画面共有などの洒落た機能は全くついていないが、バーチャルパーティをだらだら楽しむには必要十分なサービスとなっている。

とりあえず、私が現在把握しているバーチャルミーティング&パーティーツールのレビューを独断と偏見で書いてみた。これを通して面白いなと気づいたのは、ロックダウンが、ビジネスで使われていたこのような技術を、ビジネス以外のカジュアルな用途に一挙に近づけたということだ。米国に長年住んでいても、日本の友人とバーチャルお茶会や飲み会を開こうとは思ったことすらなかった。日本の友人たちから飲み会をしたよという報告を聞いて羨ましがったものだ。それが、パンデミックにより、同じ土地に住んでいても気軽には集まれなくなった今、世界中でパーティのバーチャル化が進んで、ついにどこに居ても参加できるパーティが現実になった。長年会っていなかった友人たちとバーチャル空間で会えるようになったのは、パンデミックが生みだした小さな嬉しい副産物だ。

そのうちに、バーチャルリアリティの技術が進み、画面の中のひらべったいパーティではなくて、3Dのバーチャルワールドでいろんなことを一緒にできるようになるかもしれないとちょっとワクワクした。

PVアクセスランキング にほんブログ村