シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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潔く退がろう(規制緩和フェーズ2)

今日はいろんなニュースがあって、書けることは色々あるけれど、今日はやっぱりこれは外せないというニュースがある。

カリフォルニア州サンタクララ郡は今日、7月13日月曜日にヘアサロンやジムなどのサービスが約4ヶ月ぶりに解禁になった。が、同日昼、ニューサムカリフォルニア州知事の発令により明後日の水曜日に再閉鎖が発表された。月曜日と火曜日のたった二日間のオープンとなったため、いわゆる三日天下にも満たなかった。

すでに何度も書いてきたのだけれど、この日記を初めて読む人のために簡単に説明すると、シリコンバレーのあるサンタクララ郡は、規制緩和に対して慎重であったカリフォルニア州の中でも、特に慎重な郡である。そもそも全米で一番最初にロックダウンを宣言したのもサンタクララ郡なのだ。それは、カリフォルニア州のロックダウン宣言よりも早かった。

そして、5月末から徐々に規制を緩和し始めたカリフォルニア州の中でも、最も慎重に最も時間をかけて規制を緩和してきたのもサンタクララ郡だ。サンタクララ郡にはそれをできる土台があった。

シリコンバレーにある世界に名だたる大企業やスタートアップを抱えているサンタクララ郡には、世界中から優秀なブレインが集まってきている。彼らは在宅で仕事もできるし、データを読む力もあり、科学的アプローチを好む。同時にハイテク富裕層が多い郡でもあるので、通常通りに営業できないビジネスをサポートできる人も多い。レストランでのテイクアウトが推奨され、通わないジムに対しても会費を払い続けることができる住民が多い土地なのだ。そんな科学を敬愛する忍耐力の高い住民に支えられて、周りの郡に比べるとより多くの人口を抱えているにも関わらず、感染者や死亡者数を比較的低く抑えることができていた。その努力がデータにに現れていたため、カリフォルニアの郡3分の2のぐらいが指定されている郡監視リストに入っていなかったのだ。今日までは…

残念なことに、サンタクララ郡は、カリフォルニア州で最も遅くヘアサロンやジムがオプーンされた今日、比較的には少ないとはいえ人口の多い郡の宿命である感染者数の多さにより、とうとうカリフォルニア州の監視リストに入ってしまった。そして、同日、ニューサムカリフォルニア州知事は二日以上監視リストに入った全ての郡における、室内アクティビティのほぼ全てのシャットダウンを発表したのであった。

というわけで、サンタクララ郡では今日を入れて2日だけヘアサロンやジムが営業され、水曜日には再びシャットダウンされることが発表された。この日のために準備を進めてきたビジネスたちのことを考えると胸が痛い。ほぼ4ヶ月ぶりの営業再開であり、安全管理のための様々な準備を進めてきたであろう彼らに与えられたのは、たったの2日間だった。

あまりにも不運であるが、この決定に驚いた住民は多分少なかったのではないかと思う。それほどまでに感染者の数は増えていた。全米一の人口を誇るカリフォルニア州なので、1万人あたりの感染者数や死亡者数は実は他の州にくらべて相当低い。しかし、人口比がどんなに低くても、人口が多いのだからその数は全米トップに近い。今後、感染者数の増加を追いかけるよう死亡者数が増えていくことを考えれば、これ以上の感染者数の拡大を受け入れることはできないと、ニューサム知事は考えたのだろう。

実は州政府がシャットダウンしたのはそれだけではない。カリフォルニア州全体を通して、室内での飲食禁止、ワイナリーやテイスティングルームの閉鎖、動物園や博物館の閉鎖、バーも全面閉鎖した。また、監視リストに入っている郡に対しては、ジム、出勤が必要なビジネス以外のビジネスオフィス、教会のミサ、ヘアサロン、ショッピングセンターなど、室内で行われるアクティビティのほとんどをシャットダウンした。ちなみに監視リストに入っている郡だけで、カリフォルニア州の人口の70%ぐらいが住んでいる。

ということは、ほとんどの州民に対して、過去1月半ぐらいの緩和内容をほとんど全てロールバックしたわけだ。これは、全米からドラマティックであると受け取られるくらい衝撃的な潔さだった。

個人的には、そんな動きをすっぱりと行うニューサム知事運営を評価したい。どうせやるなら、これくらいやらなくては早い効果が期待できない。指数関数的に増えていくウィルス感染相手に戦うには、これくらい荒療治が必要なのだと思う。

しかし、カリフォルニアよりもずっと悲壮で厳しい状態に置かれている、アリゾナ、テキサス、フロリダでは、遠慮がちに、マスクを強制するとか、夜遅くにはバーを締めるとか、生ぬるいロールバックが主流だ。フロリダに至っては、今や世界のエピセンターと名指しされている現状であるにもかかわらず、先週末ディズニーワールドをオープンした。また、第二の感染爆発、ニューヨークシティ化が心配されているテキサス州ヒューストンでは、市長が街をロックダウンしようとしたら州政府からロックダウンをするなという待ったがかかったという恐ろしさだ。カリフォルニアに住んでてよかったと思った。

確かに、2日だけの営業となった大勢のビジネス経営者たちは泣くに泣けないような、心が折れるような展開だっただろう。それでも、これによって2週間後に100人1000人の命が救われるかもしれない。そう信じて、今は名誉の撤退をしよう。

ほとんど影響を受けない在宅ワーカーが気楽なことをいうなと、自分でも思う、自らの一滴の血も流さないで(4月には相当流血したけど)、潔いことを書き散らすことに苦い罪悪感を感じていないことはない。

それでも、今、後戻りすることは正しいと思っているから、せめて、ジムには行かないけど会費は払い続けよう。レストランのテイクアウトもたくさん買おう。バーはもともと行かないからお手伝いできないけど、地元のワインを通販でガンガン買おう。ショッピングセンターへは行かないけど、通販でショッピングをしよう。博物館は開いたら絶対行く。ヘアサロンは今はサポートできないけれど、半年ぐらい先に安心して行けるようになったら、毎月行って毎回二回分ぐらいのお金を使うので許してほしい。

そうやって、もう一度頑張って、カリフォルニアの奇跡をまたみんなで掴もう。

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