シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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学校教育の行方(規制緩和フェーズ2)

米国の新学期は8月上旬または中旬に始まることが多い。日本がまさしく夏休み真っ盛りのお盆の頃、米国の学生たちは新学期を始めていると思えばだいたい間違いない。余談になるが、このズレは不便なもので、日本から夏休みを利用して米国に遊びにくるお客さんがいても、こちらではもう子供達が学校が始まってて一緒には遊べませんということになるのだ。

米国の学生は6月の始めからずーっと夏休みなのだから、8月には学校は始まってもらわなきゃ困る。早く学校を始めてもらって、うるさい子供を追い出したいなどと言う夏休み中のお母さんたちの愚痴は日米共通であるが、今年は特に3月中旬のロックダウン以来、小学生から大学生に至るまで家に監禁状態だったので、すでに子供が家にいる期間は4ヶ月近い。

残り1ヶ月の夏休みの後、子供達は5ヶ月ぶりに学校に登校すると、誰もが思っていたのは数ヶ月前までだった。そう、5月の中旬ぐらいまではそう思っていた。6月になった頃、子供達が登校しないまま夏休みに入ってしまってから、再び感染が拡大し始め、世の親たちは子供達が8月に学校に戻れるのかどうかだんだん心配するようになってきた。

いくらオンライン教育が進んでいるはいえ、オンラインスクールと実際に顔を合わせて学ぶ授業は教わることがだいぶ違う。親も子供も再び学校生活が始まることを望んでいるのだが、学校側としては、クラスに入る生徒数をこれまでの半数に抑えなくてはならい状況では、どうやって授業を進めればいいのか答えが出せないでいる。

6月の末ぐらいまでは、週の半分はオンラインで、残りの半分は登校するグループをいくつか作って、入れ替えながら運営するハイブリッドと呼ばれる方法を取るのではないかと考えられていた。本当なら全生徒が毎日のカリキュラムを学校に登校してこなして欲しいが、それでは十分にソーシャルディスタンスを保つことができないならば、ハイブリッドもやむを得ないと人々は受け入れていた。

しかし7月になって、いよいよ感染の再拡大が本格的になるにつれ、雲行きがさらに怪しくなってきた。この状況下、今週になって、シリコンバレーとその周辺地域では、8月から全部または90%をオンラインスクールにすると発表する学区が出てきた。同時に、サンノゼ市の教師が作る団体から、今の体制で登校して授業をするのは非常に危険なので受け入れられないというコメントが発表された。徐々に、徐々に、全面オンラインスクールの可能性が膨らんできている。

もし全面オンラインスクールで新学期になったとしたら、多方面に大打撃が予想されている。共働きかつ在宅で働けない親の子供はどうするのか?たとえ在宅で働けるとしても、子供がオンラインスクールの授業をちゃんと受けているかどうかをチェックしたり、わからないところを助けたり、休み時間やお昼に世話をしたりしながら、どれだけ仕事効率を保って働けるのだろう。

実際のところ、会社に勤務していない人だって、小さな子供の学校サポートや朝から晩までの生活の世話を四六時中し続けるのは相当に厳しい。先生の言うことなら聞く子供も、親の言うことは聞かないと言うのはよくある話だ。そんな状況で子供達はどこまで学ぶことができるのだろうか。

オンラインスクールは、どうしても子供の学力の差を広げてしまう傾向がある。先生は画面の向こうの子供達が理解しているかどうかを、教室にいるときのように察してやることはできないし、助けてあげることもできない。生徒は自らの意思で授業に集中しなくてはならないし、内容がわからなければ自分で質問しなければいけない。生徒の自主性に多くを期待するシステムだ。そう言うタイプではない子供は、あっという間に取り残されていってしまうだろう。

その上、友達との交流もないし、楽しみにしていたクラブ活動もない。純粋に学問を愛していない限りは、学校に参加する意味すら見失って途方にくれる子供が出てきそうだ。

でも、教師側の言い分もわかるのだ。特に小学校低学年の子供に学校で一日中マスクをしてソーシャルディスタンスを保ちなさいと言っても、それに従えるのは半分ぐらいだろう。そんな学校生活はリスクが高いと感じて当然だ。かと言って、そのような子供達に家でコンピュータの前で授業を受けさせようとしても、それができるのも半分ぐらいのような気がする。幼い子供を抱えた親たちは、どうしたらいいのか軽く絶望中に違いない。

我が家のティーンエイジャーはハイスクールなので、オンラインスクールになると決まったら、残念だと思うところもあるだろうけど、オンラインにも慣れてきたし、気楽だし、まあいいかと問題なく過ごしそうではある。が、私ははっきり言って学校にいってもらいたい。昼間は集中して自分の仕事だけをしたい。

大学もオンラインで始まる可能性が高いと言われている。現在、特に若い人の間で感染が広がっていることもあり、大学生が寮やカフェテリアやバーやシェアハウスに集まったら、クラスタ感染のリスクはかなり高そうだ。

このような状況において、大学がオンラインスクールになったら国際留学生は強制的に自国に帰るようにと、とんでもない無茶振りまで入って、学生たちは非常に苦しい立場に立たされている。

まさか、こんなことになるとは誰も思わなかっただろう。いや、ファウチ博士のような専門家は予想していたのだろうか。いや、でも3月のロックダウンの時点では、さすがに7月のこの現状は予想されていなかったはずだ。もしかしたら最悪のシナリオの中には入っていたかもしれない。しかし、5月に規制緩和が始まった時には、7月の悪夢は多くの専門家が予測していた。にも関わらず、科学を信じない楽観的かつ刹那的な行動が、米国をこの状況に導いた。

3月のロックダウンの時点でSFみたいだと思った世界は、4ヶ月たった今も、現実のままだ。この後、何ヶ月私たちをどこまで運んでいくのだろう。

 

 

 

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