シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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マスクをしない理由(規制緩和フェーズ2)

今日は食料品の買い物に行ってきたのだが、どこで周りを見回してもマスク着用率は100%だった。やはりシリコンバレーで買い物をするときのマスク着用率は非常に高い。

ところが、南に下ってカリフォルニア中でも最も多くの感染者を出しているロサンゼルス周辺に行くと、光景はだいぶ違ってくるらしい。人々がマスクなしで街を散策したり、バーやレストランに集ったり、公園でバスケットボールをしたりするような、ごく普通のパンデミック前の生活を目にすることのできる地域もあるらしい。ちなみにロサンゼルス郡の過去2週間の感染者数累計は約23000人、死者は433人だ。

今朝読んだ記事では、ロサンゼル郡の端っこにある閑静な街グレンドーラで、ロサンゼルスタイムスの記者が彼らが「マスクをしない理由」について取材をしていた。

まず、年配のマスクをしていないご夫婦に理由を聞いてみると、「(マスク着用は)多分ただの政治的な戦略だと思うんだよ」という答えだった。このご夫婦はウィルスに感染した人を知らないし、感染者が増えているのは単にテストの件数が増えているからだと思うそうだ。彼らは緩和されたことによって実際に感染者が増えているという情報を信じていないらしい。

次に、ある男性にインタビューをする。彼は毎晩バーに飲みに行っているらしく、バーでマスクをしている人は一人もいないそうだ。彼によると、郡当局は新規感染者の数ばかりに注目して、過去に感染から回復した人の数は全く無視しているのはおかしいと思うと答えた。

マスクをせずに歩いていた親子連れの母親に聞いてみると、マスクに本当に効果があるかどうか疑わしいと思っているという答えだった。

別の親子連れは、フレッシュな空気を吸うのが好きだからマスクをしないという答えだった。彼らもやはりマスクの効果は疑わしいと思っていると答えている。またCDC(アメリカ疾病予防管理センター)はマスク着用に関して矛盾したことを言っていると語っていた。

いやいや、そんなことはない。確かに最初はマスクの必要性に懐疑的であったCDCではあるが、現在は明確にマスクを着用を推奨している。

ここで、記者はマスクをしている人にもインタビューをしている。「この街は狂ってるよ。80パーセントの人がマスクをしていない。彼らは、全てがでっち上げだと信じてるんだ。

そう。最大の問題は、マスクをしていない人たちは、マスメディアが発する情報を得ていないか、信じていないかのどちらかなのだ。私が知る限り、たくさんのマスメディアが、感染拡大の危機、危険性、感染者数や死者数などのデータ、感染拡大を防ぐために有効な手段としてのマスクとソーシャルディスタンスについて、あの手この手を使って必死になって報道している。しかし、これまたたくさんのアンチマスクの人々は、そのマスメディアの情報を全く信じていないのだ。マスメディアの情報は操作され、でっち上げられていると思っている。

こんなにマスメディアが信用されない先進国がほかにあるだろうか。

確かに、世界中どこでも、マスメディアの言うことを鵜呑みにするのはよくないと考えられている。メディアは得てして、事件や問題の切り口を巧妙に操作することで、事実の見え方を変えてしまう危険性があるからである。

しかし、今の米国ほど信用されていないマスメディアも珍しい。いくつもの新聞やニュースが同じ情報を流しているのだから、ある程度信用性があると判断しても良いと思うし、数々の大学や研究所や専門家が、インターネットを通じてデータや研究結果を発表してることを考えれば、感染者数や死者数をごまかしていることはないと推察できる。それなのに、なぜたくさんの人が信じてくれないのだろう。

一般的に、マスメディアの記事が自分の考え方を支持してくれない場合、記事を読み進めていくのは苦しい作業だ。誰にとっても、自分の信じていることを信じてもらえるのは嬉しい経験だが、自分の信じていることを疑われるのはとても不快だ。そこで、マスメディアを信じていない人々の多くは、自分の考え方と違うであろう記事は最初から読みたくない。そして多分読まない。同じことを信じている人たちからSNSや噂話で伝わる情報を得ている方が気楽だ。この状況では、マスメディアがどんなに頑張って説得力のある記事を書いたところで所詮無駄である。

しかし、冷静に考えてみれば、独裁者のいる国でない限り、もし偽のニュースを毎日毎晩マスメディアが垂れ流しにするような国が本当にあるとしたら、それは事件である。自由を愛する民主主義の国はそんな荒廃した国ではないと信じたいし、彼らにも信じて欲しいと思った。

 

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