シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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米国の良心からのメッセージ(ロックダウン68日目・現時点の解除予定日まで残り9日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

以前にも、この日記にサタデイナイトライブのホストとして登場したトム・ハンクスだが、今日はまた米国を代表する良心として味のある姿をみせてくれた。

実はトム・ハンクス、シリコンバレーからサンフランシスコ湾を挟んでほど近いオークランドの公立高校スカイラインハイスクールの1974年の卒業生だった。私も知らなかったけど。

今日、スカイラインハイスクールはビデオ卒業式を開催した。これも前の日記に書いたけれど、ハイスクールの卒業式は米国の学生にとって、大人への第一歩となる非常に象徴的なイベントだ。壇上で卒業証書を授与される姿を記憶に刻むことを、多くの生徒やその親は熱望していたはずなので、2020年ロックダウン世代となった卒業生は多かれ少なかれビデオ卒業式にならざる得なかった不運に肩を落としたと思う。

そのビデオ卒業式にトム・ハンクスがサプライズ登場した。自宅のスクリーンの前で、ビデオ卒業式を物足りなく視聴していたスカイラインハイスクールの人々から湧き上がった歓声が聞こえるようだ。みんな大興奮でスクリーンに釘付けになったに違いない。

彼はいつもの穏やかでちょっとユーモアがかった語り口で、後輩の卒業生たちにカジュアルなスピーチをした。なかでも印象的なのは次の言葉だろう。

「君たちの幸運を祈る。スカイラインハイスクールが僕に向かうべき方向性と従うべき本能を気づかせてくれたように、君たちも同じことを経験していたらいいなと思っている。自分の本能に従いなさい。君たちは、このパンデミック後の世界がどんな世界になるのか、それを導いていくために選ばれたのだと考えてほしい。よい世界を創ってほしい。できるかい?僕たちは君たちを頼りにしているんだよ。

明るく優しく若者の肩を押す言葉が暖かい声で語られると、ちょっと散らかった彼の書斎を背景にダサめの黒縁メガネの彼だったけれど、まるで映画の1シーンのようだった。この言葉が、誰でもなく自分たちに語られていたスカイラインハイスクールの生徒たちの多くは、感動したんじゃないかなと思う。

という、非常に心暖かくなったニュースだったのだが、そういえば、我が家のティーンエイジャーも2週間後にミドルスクールのビデオ卒業式だ。ミドルスクールの卒業式はハイスクールの卒業式ほどは貴重なものではないので、ビデオ卒業式になったのは残念だけれど、まあ、しょうがないか、と本人も家族もそれほど気にしていない。

でも、よく考えたら、トム・ハンクスが言ったように、うちのティーンエイジャーも2020年の選ばれた世代なのだ。この歴史的なパンデミックとそれに伴うロックダウン、学校の休校とオンライン化、家に家族と閉じこもって2ヶ月、このめまぐるしい変化に柔軟に適応してきた世代。そして、ロックダウンの後、パンデミックの後、確実に変化を遂げていく世界の主役を担う世代だ。

このロックダウンの貴重な経験が、今後の人生に悪い方ではなくて良い方の影響を残してくれることを願っている。トム・ハンクスの言うように、彼らは変化に満ちた世界を生きていく。私たちが育ってきた世界とは随分違っていくだろう。どうせなら、世界は彼らの新しい発想で築かれてほしい。ロックダウンで身につけた柔軟性を大いに発揮して新しい生き方を創造してくれればよいなと思った。

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