シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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パンデミック後の働き方(ロックダウン50日目・現時点の解除予定日まで残り27日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

米国政府はウィルスによる死者は6月までに10万人を超えるだろうという見通しを発表した。今日も全国で2千人を超える死者が出ている。実は多くの専門家は10万人では済まないであろうと予想している。これはベトナム戦争における米国の死者数を優に超え、下手をすれば、その倍の生命が失われる可能性がある

確かに感染が広がるスピードは緩んできたとはいえ、収束にはまだ遠いこのような状況にも関わらず、先週末から多くの州がロックダウンの規制を大胆に緩和し始めた。誰も口に出してはっきりとは言わないけれど、感染者や死者が増えるのを覚悟の上での緩和なのではないかと思う。より多くの犠牲を払うことになったとしても、経済的に痛めつけられている社会と保守的なリスクテイカーたちが掲げる「自由」の抗議行動を抑えきれない(そもそも抑えようとしていないリスクテイカーの政治家も多いのだが)のが本音なのかもしれない。

一方、カリフォルニア州は、今日、今週金曜日から規制緩和に踏み切るための発表をした。早い時期からニューサム知事が、カリフォルニア州は「科学」の基に行動すると言っていた通り、ほかの多くの州とは異なり緩和される内容は多くなく、かなり厳しい規制が続くことが発表された。

本屋、衣料品店、花屋、おもちゃ屋、スポーツ用品店などの小売業の営業が許可されるのだが、店内でのショッピングは認められず、店頭での注文品の受け渡しのみが許可される。これらの商品はなんでもネットショッピングで買える時代であることを考えると、ウィンドショッピングを楽しめない小売業が開いたところで、常連客以外の買い物客が訪れることは期待できないように思える。ただ、今週末に、母の日を控えている花屋だけは開いたら繁盛しそうではある。

先ほど述べたように、カリフォルニアの規制緩和はあくまでも科学的なデータを基礎に決定されている。それらのデータをスライドで示しながら、なぜ今、これが緩和ができるのか、なぜこれだけしか緩和できないのかをきちんと説明している会見は好感度が高かった。

最近ニュースを騒がせ続けている抗議集会や政治的なアピールに押し切られての緩和ではないことがわかり、多くのカリフォルニア人は安心したに違いない。確かに派手な抗議行動がマスコミに取り上げられてはいるが、カリフォルニアでは彼らはごく少数派であって、総合的なアンケート調査では、ニューサム知事の慎重なやり方は過半数以上の住民に好意的に受け取られている。

さて、今日はもう一つ面白い記事を読んだ。

パンデミックが米国のホワイトカラーの働き方を未来永劫変えてしまっただろうという記事だ。ロックダウンによる一時的な処置として始まった様々な変化のうち、ワクチンが開発されパンデミックが収束された後にも多分定着し続けるであろう習慣を解説した記事だった。

その一つとして、ほぼ確実に残りそうなのが、在宅ワークである。ロックダウンにより、多くのホワイトカラーたちはオフィスに行かなくても働けることが証明された。それゆえ、パンデミック後の米国ホワイトカラー社会では、本社のオフィスで働くのは一種のステイタスシンボルのようなものになり、普通の社員は家で働くか、近所のサテライトオフィススペースを使用して働くことになるだろうというものだ。本社のオフィスは作業スペースというよりも、カンファレンスセンターのような象徴的な場所となり、物理的に集まらなくてはいけないような大小さまざまな会議を開くために使われるようになるだろうとの予想だった。

そして、これに伴い、労働時間が9時から5時のような伝統的な働き方は消滅するだろうとも予想されていた。自宅にいれば、日中、買い物や子供の送迎などに時間を使うようになることが想定されるので、労働時間は個人のスケジュールに合わせた柔軟なものに変わっていくだろうと解説している。

それって私の仕事のフローだ。実際、私はメイン顧客がドイツ企業なので、すでに何年も前から在宅ワークだ。一緒に働かせてもらっているお客様チームとは親しくしているのだが、実はそのメンバーの誰とも一度も会ったことがない。それでも、コミュニケーションに困ることはないし、在宅ワークでできない作業もない。何か相談したいことがあればチャットですぐに話し合いができるので、時差だけが少し不便だけれど距離そのものは全く気にならない。ドイツ以外にも、インド、中東、ヨーロッパ、アジア、南米と世界中に散らばった開発メンバーとやりとりすることも多いので、誰がどこに存在しているかは、あまり必要のない情報なので特に意識することもない。

また、全員が時差のある環境で仕事をしているので、誰が何時に働いているかは誰も気にしていない。私はドイツと連絡が取りやすい早朝から午後早い時間に仕事をして、一旦打ち切り、さらに作業が必要な時は、夜仕事に戻るというスタイルを定着させているが、チームの誰もそんなことを知らないし聞かれたこともない。

まさしくこの記事そのまま、私がこれまでやってきたような働き方が、パンデミックを機会に一般的になるらしい。我が家のもう一人の勤め人は、これまで渋滞に苦しんできた通勤時間が減るので嬉しい傾向だろう。が、あえて言わせてもらえば、これまで日中一人で好き勝手にしていた家を、今後は一日中シェアしなくてはいけなくなりそうなので、日々のストレスが少し増えるような気もする。

ロックダウンが緩和されて、パンデミックが収束したら、もう少し広い家を借りて在宅労働環境の改善に勤めた方が良さそうだ。パンデミック後に流行る業界は、もしかしたら在宅オフィス構築のためのリフォームかもしれない。

 

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