シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ライブミュージックと酒量(ロックダウン41日目・現時点の解除予定日まで残り8日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

毎日同じ顔ぶれで家に閉じこもって、同じリズムで1日を繰り返していても、週末は週末だ。できるだけ仕事には手をつけないで、週末らしく過ごして、ロックダウン生活の充電をしたほうがいい。

という訳で、新鮮な野菜と果物を求めて朝市に出かけた。ロックダウン中に、週末の朝市の営業が認められているのは少し以外だった。どうやってソーシャルディスタンスを保つのだろうか。いざ訪れてみると、開催している駐車場にはいつもと同じ店のテントが、いつもよりも相当広い間隔を開けてずらりと並んでいた。

通常、わりと雑然としているテントの店には、今は入口や出口が舗装路にチョークで書き書きしてあり、進行方向を支持する矢印も2メートルごとに書かれている。チョークというのが微笑ましい。人気の店のテントの入り口では、店員さんが入場制限をしていて、店の外で待っているお客さんのために、やはりチョークで2メートルおきぐらいに円が書いてあり、その上に立って入場の順番を待つ仕組みだ。いつもならうんざりする入場制限も、チョークの印の上に立つという懐かしい遊びみたいな感覚と、目の届く範囲に溢れる野菜や果物を見学しながら待つのでちょっと楽しい。

ここでも、みんなマスクをしているので表情はわからないけれど、朝市独特の明るく楽しい気分は健在で元気になる。かき氷屋のテントまで健在で、その光景に癒された。

新鮮な食材を抱えて家に帰り、のんびり午後を過ごしていたら、好きなジャズシンガーがオンラインでライブをやるという通知が入ってきた。どれどれとのぞいてみると、自分のアルバムから歌をのぞいたカラオケを準備していて、コメント欄に入ってくるリクエストを次々と拾っては、どんどん歌っていくというカラオケ大会形式だった。彼女とコメント欄のやりとりがライブ感をもりあげ、いいねマークやハートマークが歌っている彼女の周りを飛び交う。オンラインにも関わらず、そこに居る感、ライブ感満載ですごく楽しい。自分もちょっとコメントをうってみたりして一層参加している味わえる。

それなりのイヤホンで聞けば、音響の悪いライブハウスよりも音は綺麗だし、必要に応じて別のことをしながらでもライブを聴き続けられる。コメント欄には、米国のみならず、ヨーロッパ、アジア、もちろん日本からも、次々とコメントが書き込まれて国際色も豊かだ。その上、ライブの後、なんと本人からお礼の返信が入ったのだ。何百人という視聴者全員に返信を入れているのだろう。これは純粋に嬉しい。オンラインのライブと言えば仕事の会議ぐらいしか知らなかった私が、こんな音楽の楽しみ方を学んだのはロックダウンの副産物といえる。

ロックダウンを境に、エンターテイメントを生業とするアーティストたちは苦境に立たされている。CDが売れなくなった時代、ライブ活動は彼らのメインステージだ。毎日あちこちに移動しながら、自分の好きなことを仕事にできた幸運と努力の成果を謳歌していた彼らは、突然営業中止を命令されたお店と同時に深刻な打撃を受けてた。しかし、音楽を生業にできるよう生き残っている彼らは実にたくましくて、様々なサービスを使って次々にオンラインライブを開催している。無料のライブもたくさんあって、無料である代わりに寄付を募ったりCDを売ったりしている。毎日が単調なこんな時だから余計に、楽しくて癒される時間を共有すると、彼らをサポートしたい気持ちが湧いてくる。

芸術活動というのは、生物が生存するのためには必然ではない余剰な活動だけど、それがあるとないとでは、人間性が変わる。人間が他の生き物と大きく違う、人間が人間である理由の1つである。

そんなこんなで、家で居つつ、ライブに参加して週末気分が盛り上がったところで、遅い夕飯をワインと共にいただくことにする。ワインもいつものテーブルワインではなくて、ちょっと良いスパークリングロゼにして、ペアリングにオススメだと聞いたシーフード。冷たくてピリッとしたロゼに、オリーブにみじん切りのトッピングが香るマグロのタタキ風ステーキと朝市の新鮮な野菜があればご馳走だ。

ロックダウンで家から出れなくても、買い物で暑いのに窒息しそうなマスクをしなくてはいけなくても、朝市の楽しみである味見が一切できなくても、やっぱり週末は週末でありたい。こんな風にリズムを維持して過ごせればロックダウンも悪くない。でも、こういう風に過ごせるのは幸運なのだということも忘れてはいけない。社会構造を維持するために休む間も無く働き続けている人や医療関係者に心から感謝の意を表しつつ、グラスを空けたい。

そう言えば、ロックダウンに入ってから明らかに酒量が増えた。車を運転しないし、時間に余裕があるから、ゆっくり飲める機会が多い。それは誰もが同じらしくて、取引先のドイツに住んでいるマネージャも、ドイツ人らしくビールを飲む量が増えたと笑っていた。

ニュースにはアルコール中毒の懸念なども掲載されるようになってきている。どんなに家で閉じこもっていても、週日の昼間からお酒を開けることはしないようにしようと、肝に命じている。

 

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