シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

姉妹サイト「シリコンバレーをよむ」もぜひご訪問ください

シリコンバレーのオレンジティアおめでとう!とりあえず!(オレンジティア)

今日は火曜日、カリフォルニアのティア成績発表会の日だった。

ニューサム州知事はほぼ毎日記者会見をするのだが、火曜日の会見は、住民にもビジネスにも注目されている。なぜなら、毎週火曜日は、各郡の過去2週間の新規感染者数と陽性率のデータを基に、より規制緩和されたティアに昇進したり、より厳しく規制されたティアに落第したりするのが発表されるのだ。これを、私は勝手にティア成績発表会と名付けている。カリフォルニアの規制緩和を制御するティアシステムについては、「再挑戦」を参照してほしい。

ティアシステムをある程度眺めているうちに、ティアシステムは成績を基準とした昇進・落第システムに似ていることに気づいた。ティアを決定する条件は、数値化された新規感染者の数と陽性率であり、この成績を基に、ティアシステムの決定はシンプルにシステマティックに働くようになっている。そして、成績が良くなると、より緩和された自由というご褒美がもらえ、成績が悪くなると、より厳しい規制という罰を受けることになる。人々のやる気をくすぐるアメとムチのシステムだ。成績は、もちろん郡の相対評価などではなく、明確な絶対評価だ。

数値化されたシステムは、曖昧さがなくスッキリとしていて、各郡にとっても、なにを目指せばより緩和されるのかが明確になってわかりやすく、いい具合に働いている。

そして今日、シリコンバレーの拠点となるサンタクララ郡は、5週間のレッドティア期間を経て(「ティア2がやってきた」参照)、めでたくオレンジティアに昇進した。

8月のピーク時には新規感染者が1日350人を超えていたサンタクララ郡であるが、今は、1日100人以下、人口10万人に対して4人未満というところまで感染を抑えてきた。この成績を、サンタクララ郡の住民は誇りを持っていいと思う。

ところで、このティステム、最初はティア1~4と数値がついていたのに、いつの間にか、色分けで呼ばれるようになった。一番感染が拡大していて規制が厳しいティアはパープルティア、少し規制が緩和された状態がレッドティア、さらに感染が収束方向にむかい規制が緩和されるとオレンジティア、そして最も規制が緩和された状態がイエローティアである。

下の図は、このティアシステムができてから今日までのカリフォルニア州のティアの色の変化だ。左から9月9日、23日、29日、10月13日であるが、徐々に色が明るくなってきている、つまりカリフォルニア全体的に規制が徐々に緩和してきている、ということは感染が抑制されてきたことがわかる。

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さて、今日サンタクララ郡が昇格したオレンジティアであるが、いったいなにが緩和されたのかをみてみよう。まず、大きいのはレストランの室内営業がロックダウン開始後初めて許可されることになった。25%の客しか入れてはいけないことになっているが、それでも大きな進歩だ。これまで開いていた各サービスの制限も少し緩和されて。ジム、各種エンターテイメント、教会のミサ、映画館など、どれも25%の顧客数で営業が許可されている。また、レッドティアまでは完全に禁止されていたバーが、アウトドアだけだが営業再開が許される。テーマパーク、コンサート、ライブシアター、ナイトクラブなどは未だ営業禁止のままだ。

この発表を受けて、今週から来週にかけて街がまたさらなる賑やかさを取り戻すだろう。しかし、誰もが気づいているように、この規制緩和が原因であっというまに感染が拡大する可能性を甘く見積もってはいけない。少しでも防御を下げすぎると、あっという間に感染の波に飲まれてしまうのは、カリフォルニアは経験済みだ。実際に、現在米国の過半数の州が、新たな感染拡大の波に飲まれていて、米国の一日の新規感染者数は5万人を超えているありさまだ。

だから、栄光のオレンジティアに参加できることになっても、シリコンバレーの人たちはやっぱりマスクをして、ソーシャルディスタンスを保ちながら、規制緩和を楽しむ必要がある。気が緩んで成績が悪くなって、再びレッドディアに戻ることのないように、むしろ規制が緩和されても、気を引き締めてさらに感染者を減らすことで、更に良い成績でイエローティアを目指してみんなで頑張ろう。

そうそう、最後の付け足すことがある。カリフォルニア州はとうとう正式に、人々がプライベートで集まることを許可した。その条件は、3家族以内、アウトドア、2時間以内、マスクとソーシャルディスタンスを保つことである。相変わらず厳しけれど、許可されたことは、これまで真面目に規制を守り、7ヶ月ほぼ友人たちに合わずに暮らしてきた人々にとっては大きな進歩なのでちょっと感動した。マスクとソーシャルディスタンスで楽しみたい。

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シリコンバレーはティア3に昇格するのか?(ティア2)

今日はやばかった。仕事が。

あまりにゴタゴタが過ぎたので、もう今日はなんにもしないで寝ようと思ったけれど、やっぱりなんか書いとこ、とブログを開いたのだが、難しいニュースサイトを読む気力が残っていないので、まあ、私の今日の注目だけにさらっと触れることにする。

米国で再び感染拡大の波の予兆が広がっている。31の州で、感染者が過去7日間よりも増えているし、そのうちの9州では、入院者数が過去最高を記録した。明らかに感染は再び拡大方向に舵がきられたようだ。

現在一般的に使用されている予測モデルによると、今の状態が続けば米国は2月までに更に18万人の死者を数えるだろうと予測されている。すでに21万人が亡くなっているのに上乗せしてである。この日記で本当によく登場するファウチ博士は、この劇的な数字が米国民に現実を気づかせることになってほしいと切実に訴えている。

しかし、残念ながらこの数字だけでは、多くの米国民を動かすことはできないだろうと思われる。米国民がデータと数字に怯えていたのは4月5月ぐらいまでのような気がする。その後は、あまりに大きな数字に慣れすぎて、感覚が麻痺している。彼らの目をさます数字は、たぶん、10万人の目に見えない死よりも、1人の身近な死だ。10万人20万人という数字は、あまりにも日々の生活からかけ離れすぎてしまった。

ファウチ博士は、また、再びシャットダウンをしなくてはいけないのではと心配する人がいるようだが、それは必要ないという (たぶん彼は本当はシャットダウンをしたほうがより良い結果を生むとは思っているけれど)。マスクをして、他人と距離をとる。たくさん人のいるところにはいかない。たくさんの人を集めない。そして手を洗う。拡大を止めるのに専門家が要求しているのは、たったこれだけのシンプルなことなのだ。それだけで、今後の犠牲者を大幅に減らすことができるのだと、ファウチ博士は相変わらず明確に力強い声で語っていたが、その表情は暗かった。

それはそうだろう。彼がどんなに訴えても、米国の感染は少し減った途端に、また増えていくの繰り返しだ。彼はAIDSの流行時を含め50年以上感染病の拡大防止に関わってきた専門家だが、現在の米国の感染拡大ほど食い止めるのが難しいものはないと感じている。原因は、ウィルスそのものの狡猾さではなく、国民が分裂していることだと語っていた。

感染病の拡大を食い止めるには、人々の間にコンセンサスが必要だ。米国の現状はそのコンセンサスが成り立っていない。

拡大が広がり続ける米国において、現在、コンセンサスらしきものが成り立っているのは、前回も取り上げたカリフォルニア州だ。カリフォルニアは米国で最も人口が多い州であるため、総感染者数も総死者数も大きな数字を出しているが、実は7月下旬から8月のピークを境に着実に新規感染者数を減らしている。また、現在の陽性率は非常に低く抑えられている。

シリコンバレーのあるサンタクララ州は、過去2週間の新規感染者数が10万人につき3.5人程度、陽性率が1-2%の間であり、規制緩和のティア3の条件である新規感染者数が10万人につき4人未満と陽性率が5%未満を満たしているため、明日のティア成績発表会(私が勝手に名付けた毎週火曜日に行われるカンファレンス)で、いよいよティア3への昇格が発表されるのではという期待が高まっている。ティア3に昇格すると、今年の3月以来初めて、レストランの室内営業が許可される。

まあよく考えてみれば、カリフォルニア州は、最初のロックダウン以来、ずーっと半シャットダウンの状態で7ヶ月を過ごしてきたので、ファウチ博士の「シャットダウンではない」というところは、厳密に言うと当てはまらないのだが、彼の言うように、マスクが広く浸透し、ソーシャルディスタンスにも慣れ、大人数で集まるイベントは行わないというルールが守られれば、再拡大を避けられると思わせる経過をたどっているのは事実だ。

カリフォルニアがほかの州に比べてコンセンサスが成り立っている感じがするのはなぜだろう。実はカリフォルニアだって100%のコンセンサスが成り立っているわけではない。保守的で有名なオレンジ郡はいつだって、州の方針に抗議を繰り返しているし、マスクをしないで街を出歩いている人が多くて有名だ。

それでも、カリフォルニアでは75%以上80%近いの人がマスクを使用しているという統計が出ている。全米でマスクを使用している人が60%程度なのと比べると遥かに高い。カリフォルニアの多くの郡ではマスクをしないと罰金をとられたり、食料品の買い物ができないからだ。このような厳しいルール、厳しい規制緩和システムを構築と展開に強く貢献したのは州政府の強いリーダシップだと考えて良いと思う。

もともと、カリフォルニアは一部の保守派は存在するものの、州全体的にリベラル寄りが過半数をしめているので、コンセンサスを取るのは比較的難しくない。そのコンセンサスを基に、州政府は強いリーダーシップを発揮できる土台を持っている。それに比べて、現在の米国は、ファウチ博士が嘆いていたように、激しく分裂中だ。国民のコンセンサスが一致せず、連邦政府の強いリーダーシップが発揮されなくては、人々が協力して感染病を食い止めるのはむずかしい。

選挙戦後、国民をまとめることのできる連邦政府のリーダーシップが切実に望まれている。

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今のところティアシステムは働いているようだ(ティア2)

7月下旬から8月にかけてのピーク以来、減り続けていた米国の新規感染者がまた増えだした。残念なことだ。最初は短期間のデータのぶれかなと思っていたけれど、残念ながら米国の感染状況は再び右肩上がりになるらしい。

今回の感染拡大は中央平原がその舞台だ。米国の感染拡大の舞台は、ニューヨーク中心の東海岸に始まり、そこが収まったところで南部、西部と広がった、それらが落ち着き出したところで、今度はいままで逃れてきた真ん中がやられている。どうやら、人々は一度は危機的な状況を経験しないと気がすまないらしい。

さらに心配なのは、悲劇的なオーバシュートを体験して以来、感染を非常に低く抑えてコントロールしてきたニューヨーク周辺の州が再び増加傾向に向かい始めたことだ。これは、秋に向かうに連れ肌寒くなり室内で過ごすようになったことや、長い自粛に疲弊し、また6ヶ月前のストレスの記憶がうすれた人々の気が緩んだ結果らしい。

人間の記憶は苦しくて辛いことは忘れやすくできている。これは大抵の場合は良い方面に働くが、今回のパンデミックに関しては悪い方向に働きがちだ。まだ、忘れるには早い。私達には、これからさらに6ヶ月以上の忍耐が求められている。

幸いなことに、今の所、カリフォルニアの感染者は夏のピーク以来減少傾向を続けている。他の多くの州が再び増加方向に向かい出したことを考えれば、これは誇るべきことだ。

カリフォルニアが未だに減少傾向を続けている理由はいくつかあると思うのだが、その一つに気候がある。秋がきて涼しくなったカリフォルニアはまさにアウトドアが気持ちの良い季節だ。この季節はもともと人々は室内にこもる必要はなく、パテオダイニングを始め、いろいろなことをアウトドアで楽しむことができる。

そして、もう一つは山火事だ。秋の初頭から大規模な山火事で空気が汚染された期間が長く、その期間は人々は反対に完全に自宅に閉じこもった。様々な不安を抱えながら、自宅に閉じこもっていた間は苦しかったし、山火事の被害を受けた人々には本当に気の毒だったけれど、少なくとも感染拡大を促すすべての行動は必然的に自粛され、感染縮小にもつながっているのでは無いかと思う。

そして、最後に誇りとともにあげたいのは、カリフォルニアの厳しいティアシステムである。再挑戦」で詳しく説明しているカリフォルニアの規制緩和ルールであるティアシステムは、今の所非常によく働いているようだ。

ティアシステムの特徴は、カリフォルニアの郡が規制を一段階(1ティア)緩和するには、上のティアの新規感染者数やテスト陽性率の条件を2週間以上達成しなければならない。2週間良い成績を出し続けて、初めて1ティアあがれるルールになっている。同時に、1ティア上がった後も、そのティアに最低でも2週間はとどまらなくては、次のティアにはいけない。これにより、仮にある郡がとてつもない良い成績を急激に達成した場合でも、一挙に2段階あがることはできなくなっている。つまり、規制の緩和の進行が、最速の場合でさえ、とてつもなく遅くなるように設計されているのだ。

また、各ティアの中にも細かい段階がある。たとえば、現在シリコンバレーが留まっているティア2は、学校を段階的に再開することができるが、学校再開はティア2に2週間以上留まれたら開始してもよいという条件がついている。そして再開方法も段階的に行うように規制されている。そこで、ティア2に入ってからすでに4週間ほどたっている今でも、公立学校に登校している生徒は非常に限られていて、ほとんどの生徒はオンライン授業のままだ。

このティアシステムになってから、公共の場でのマスクは以前に比べて非常によく守られている。なにしろ、ティア条件を達成できない状態が2週間続けば、1ティア落第しなくてはいけない。やっとのことで手に入れたより自由な状態を失いたくない人々は、感染再拡大を起こさないように注意を払うようになる。もちろん州民全員が素直に言うことを聞いているとは思えないけれど、75%ぐらいの人々がルールに従うことができれば、感染拡大はだいぶ抑えられる。

このティアシステムは、6月の規制緩和に失敗して、あっと間に感染者を激増し、社会的なストレスが急激に上がった経験をカリフォルニア州民が忘れないうちに構築された。あのときのストレスは徐々に忘れられているような気がするが、厳しく構築されたシステムが人間の記憶を補完してくれている。

さて、今後本格的に寒くなっていったき、人々が集まるホリデーシーズンが近づいてきたときに、カリフォルニアはどこまでティアシステムと共に踏ん張れるだろうか。今の段階では未知数だ。ただ、冬を迎える前に感染者の数をできるだけ減らし、陽性率や感染率を可能な限り低くしておくことは、たとえ増加傾向にかたむいたとしても、すでに増加傾向に傾いている州にくらべれば、低く抑えられる可能性が高い。

幸いまだまだカリフォルニアは良い気候が続く。11月の半ばぐらいまではアウトドアでいろいろできる気候だ。それまでに、さらに上のティアを目指してより健康な社会を達成し、来たる冬の戦いに備える防御壁としたい。

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感染対策の行方を決定する選挙(ティア2)

トランプ大統領がウィルスに感染する前から、パンデミック対策は大統領選挙の重大な論点の一つだった。しかし、彼がウィルスに感染し、入院し、回復した今、ウィルス対策はこれまでよりも更に重要な論点となった。この選挙の結果は米国民が、今回のウィルスに対してどう考えているかの表明となり、選挙後の感染対策の行方を決定することになりそうだ。

トランプ大統領とその側近たちが次々と感染し、その前後の経緯や現在の対応をみれば、彼らが今回のウィルスについてどのように考えているのかが、より明確になったような気がする。感染する前は、感染対策もしっかりとやってきたと主張してきた彼らだが、感染した後は、感染しても深刻な問題ではないという態度を明確にちらつかせるようになった。

今回のウィルスはインフルエンザと同じようなものだと主張したり、回復したあとは以前よりもよくなったと発言したり、ウィルスを恐れるなと支配されるなと呼びかけたりしている。また、感染が判明して隔離されている報道官が「I feel great」と発言していた。たとえ無症状でも、ウィルスに感染して隔離されている人間が「feel great」はないだろう。「I feel good」か「I experence no symptom」ぐらいが妥当だ。悪い冗談かと思わず笑った。

また、8人以上の感染者が発表されてスーパスプレッダーイベントと見なされているホワイトハウスのイベントの出席者に対して、ホワイトハウスからのコンタクトトレースはほぼ行われていないことがわかっている。コンタクトトレースは、感染拡大を食い止めるための最も有効な武器だといわれているのだが、このイベントに出席した200人近い人々もその前後の別のイベントに出席した人々も、その多くがホワイトハウスからコンタクトトレースの連絡を受けていないと応えている。コンタクトトレースを受けていなくても、自らテストを受けて自主隔離に入っている人もいれば、「ウィルスを恐れていないので」とテストをうけずに普通に(New Normal ではなくてほんとうの意味の普通)過ごしている人もいる。

これらのことから、ホワイトハウスとその周辺の多くの人々が、このウィルスに対する感染拡大防止の努力は必要ないと考えいることが検知できる。実際のところ、どういう風に捉えているのかは彼らが本心を語らない限り確信しようがないけれど、彼らを軸にクラスタが広がっている現状も、たいした問題ではないと捉えているのはほぼ間違いない。すでに20万人以上の米国人の命を奪っているこのウィルスであるが、彼らの見解では、インフルエンザと対して違わず、経済を犠牲にするほど深刻ではないと捉えられている。

これは、命と経済の天秤だ。これだけ聞いたら、誰もが命のほうが大切に決まっていると応えるだろう。しかし、経済の大打撃によりビジネスを失ったり、失う寸前の人々にとっては、そんなに単純な問題ではない。感染から逃れて命が助かっても、経済的な死を迎えて自殺に追い込まれるようなことになれば意味がない。そういう視点で見ると、倫理的には認めがたいこの天秤であっても、簡単に批判するわけにはいかない。命も大事、経済も大事、そのバランスをどう取るかが、今回の選挙戦の核になる。

天秤と書いたけれども、感染防止の努力をすることと、経済を廻し続けることは、必ずしも正反対の結果を描くわけではない。最大限の結果にこだわらないならば、ある程度経済を廻しながらも、他人に感染させない努力をすることはできる。

ところで、感染防止に無頓着になることでウィルスを蔓延させた場合、インフルエンザの5倍も10倍もの犠牲者をだすと考えられているCovidの犠牲者は、主に社会的弱者であることは統計が証明している。ホワイトハウスがやっていることは、単純な見方をすれば、経済活動を救うために社会的弱者を切り捨てているという政策だ。

一方、もう一人の候補者であるバイデン元副大統領は、感染対策に対して明確な違いを打ち出している。彼は、可能な限りマスクをして行動し、支持者からも距離を取り続けている。集会はパーキング形式で、支持者たちは、大きな駐車場に車を止め、車から前方ステージに立ったバイデン候補が映っている大画面をみている。バイデン氏に質問するときもステージにはあがらず、遠くからマイクで質問をする形式だ。取られている距離は半端ない。

あれだけ気をつけていれば、高齢のバイデン候補だがウィルスに感染する確率は低そうだ。彼がむしろ過剰なまでにマスクの着用やソーシャルディスタンスをとるのは、彼が単純に感染を恐れているからではなくて、彼が大統領になったときに行う予定の感染対策の見本をみせようとしているのだ。彼は常に、科学者や医療関係者が勧めている方法で皆が協力してウィルスから米国を守ろうと何度も発言している。

もしこの大統領選挙でトランプ大統領が再選されれば、感染対策は今よりもさらに緩くなり、ワクチンを待っている間も、パンデミック以前のように普通に暮らすことが促されるだろう。普通の暮らしの中で感染は広がり、それに感染して重症化した人は運が悪かったと言われる社会だ。感染したくないなら、自己責任で気をつけてくださいという社会だ。

一方、バイデン候補が勝てば、感染対策は明らかに今よりも厳しくなり、ワクチンを待っている間、少し窮屈なNew Normalなルールの中でなるべく感染を広げないようにする、社会的な努力で犠牲者の数を最低限に押させましょうという社会を目指すと思われる。

米国民は、今回の選挙で、どちらの体制でパンデミックを乗り越えるのかを尋ねられているようなものだ。社会の犠牲の上に成り立つ個人の追求なのか、個人の忍耐の上に成り立つ寛容な社会なのか。米国の行く末を決める選挙戦となる。

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感染対策の行方を決定する選挙(ティア2)

トランプ大統領がウィルスに感染する前から、パンデミック対策は大統領選挙の重大な論点の一つだった。しかし、彼がウィルスに感染し、入院し、回復した今、ウィルス対策はこれまでよりも更に重要な論点となった。この選挙の結果は米国民が、今回のウィルスに対してどう考えているかの表明となり、選挙後の感染対策の行方を決定することになりそうだ。

トランプ大統領とその側近たちが次々と感染し、その前後の経緯や現在の対応をみれば、彼らが今回のウィルスについてどのように考えているのかが、より明確になったような気がする。感染する前は、感染対策もしっかりとやってきたと主張してきた彼らだが、感染した後は、感染しても深刻な問題ではないという態度を明確にちらつかせるようになった。

今回のウィルスはインフルエンザと同じようなものだと主張したり、回復したあとは以前よりもよくなったと発言したり、ウィルスを恐れるなと支配されるなと呼びかけたりしている。また、感染が判明して隔離されている報道官が「I feel great」と発言していた。たとえ無症状でも、ウィルスに感染して隔離されている人間が「feel great」はないだろう。「I feel good」か「I experence no symptom」ぐらいが妥当だ。悪い冗談かと思わず笑った。

また、8人以上の感染者が発表されてスーパスプレッダーイベントと見なされているホワイトハウスのイベントの出席者に対して、ホワイトハウスからのコンタクトトレースはほぼ行われていないことがわかっている。コンタクトトレースは、感染拡大を食い止めるための最も有効な武器だといわれているのだが、このイベントに出席した200人近い人々もその前後の別のイベントに出席した人々も、その多くがホワイトハウスからコンタクトトレースの連絡を受けていないと応えている。コンタクトトレースを受けていなくても、自らテストを受けて自主隔離に入っている人もいれば、「ウィルスを恐れていないので」とテストをうけずに普通に(New Normal ではなくてほんとうの意味の普通)過ごしている人もいる。

これらのことから、ホワイトハウスとその周辺の多くの人々が、このウィルスに対する感染拡大防止の努力は必要ないと考えいることが検知できる。実際のところ、どういう風に捉えているのかは彼らが本心を語らない限り確信しようがないけれど、彼らを軸にクラスタが広がっている現状も、たいした問題ではないと捉えているのはほぼ間違いない。すでに20万人以上の米国人の命を奪っているこのウィルスであるが、彼らの見解では、インフルエンザと対して違わず、経済を犠牲にするほど深刻ではないと捉えられている。

これは、命と経済の天秤だ。これだけ聞いたら、誰もが命のほうが大切に決まっていると応えるだろう。しかし、経済の大打撃によりビジネスを失ったり、失う寸前の人々にとっては、そんなに単純な問題ではない。感染から逃れて命が助かっても、経済的な死を迎えて自殺に追い込まれるようなことになれば意味がない。そういう視点で見ると、倫理的には認めがたいこの天秤であっても、簡単に批判するわけにはいかない。命も大事、経済も大事、そのバランスをどう取るかが、今回の選挙戦の核になる。

天秤と書いたけれども、感染防止の努力をすることと、経済を廻し続けることは、必ずしも正反対の結果を描くわけではない。最大限の結果にこだわらないならば、ある程度経済を廻しながらも、他人に感染させない努力をすることはできる。

ところで、感染防止に無頓着になることでウィルスを蔓延させた場合、インフルエンザの5倍も10倍もの犠牲者をだすと考えられているCovidの犠牲者は、主に社会的弱者であることは統計が証明している。ホワイトハウスがやっていることは、単純な見方をすれば、経済活動を救うために社会的弱者を切り捨てているという政策だ。

一方、もう一人の候補者であるバイデン元副大統領は、感染対策に対して明確な違いを打ち出している。彼は、可能な限りマスクをして行動し、支持者からも距離を取り続けている。集会はパーキング形式で、支持者たちは、大きな駐車場に車を止め、車から前方ステージに立ったバイデン候補が映っている大画面をみている。バイデン氏に質問するときもステージにはあがらず、遠くからマイクで質問をする形式だ。取られている距離は半端ない。

あれだけ気をつけていれば、高齢のバイデン候補だがウィルスに感染する確率は低そうだ。彼がむしろ過剰なまでにマスクの着用やソーシャルディスタンスをとるのは、彼が単純に感染を恐れているからではなくて、彼が大統領になったときに行う予定の感染対策の見本をみせようとしているのだ。彼は常に、科学者や医療関係者が勧めている方法で皆が協力してウィルスから米国を守ろうと何度も発言している。

もしこの大統領選挙でトランプ大統領が再選されれば、感染対策は今よりもさらに緩くなり、ワクチンを待っている間も、パンデミック以前のように普通に暮らすことが促されるだろう。普通の暮らしの中で感染は広がり、それに感染して重症化した人は運が悪かったと言われる社会だ。感染したくないなら、自己責任で気をつけてくださいという社会だ。

一方、バイデン候補が勝てば、感染対策は明らかに今よりも厳しくなり、ワクチンを待っている間、少し窮屈なNew Normalなルールの中でなるべく感染を広げないようにする、社会的な努力で犠牲者の数を最低限に押させましょうという社会を目指すと思われる。

米国民は、今回の選挙で、どちらの体制でパンデミックを乗り越えるのかを尋ねられているようなものだ。社会の犠牲の上に成り立つ個人の追求なのか、個人の忍耐の上に成り立つ寛容な社会なのか。米国の行く末を決める選挙戦となる。

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ロックダウンが命を奪う(ティア2)

ウェブのニュースを見ていると、合間にいろいろな広告が入るのだが、公共広告も多く、最近多いもののひとつに「具合が悪くなったら、病院に行くのが一番安全です」というものがある。あたり前のような気がする。それも、Covidにかかったら病院に行きましょうではなくて、胸の痛みや頭痛などの異変を感じたら病院に行きましょうというものだ。

こういう広告が多いのには理由がある。

ロックダウンは、コミュニティをウィルス感染から救うために始めたものだ。規制の厳しさに多少の差はあれ、この政策は確実にコミュニティを感染拡大から救っている。シリコンバレーでは、3月中旬に厳戒なロックダウンを始めたときは急速に感染が収まったが、6月に規制を緩めすぎた途端に感染は劇的に急増した。そして8月、ロックダウンを再び厳しくすると9月には再び急速に感染が収まった。

データを見なくても住んでいれば、ロックダウンの効果は感覚でわかる。だからこそ、シリコンバレーの住人は、公共スペースでは誰もがマスクをしているし、お互いに距離を取ることも身につけてきたのだ。

しかし、医療関係者の中には、このウィルスに対して非常に効果的なロックダウンが、同時にたくさんの命を奪っているという視点を指摘する人達がいる。また政治的な話かとうんざりする人がいるかもしれないが、実はこれはまったく政治的な話ではなくて、データに裏付けされた話なのだ。

ロックダウンが始まってからというもの、病院を訪れる人が激減した。理由はもちろん、病院に行くことでウィルスに感染することを恐れるからである。それが、ただの定期検診であれば 1 年ぐらい定期検診をスキップしても、すぐに死につながることはないが、心臓麻痺や脳梗塞の初期症状を感じているのだとしたら、まさに死に直結する問題だ。そして、これが実際に発生している問題なのだ。

ある家族の例をあげてみよう。38歳の男性が胸に普段感じないような痛みを感じた。通常であればすぐに病院に行くような人であったが、ロックダウンの折、彼は病院に行くことでウィルスに感染することを恐れて躊躇した。その夜、胸の痛みは耐えきれないものとなり、妻が救急車をよんだものの、救急隊員の必死の対応も虚しく自宅でそのまま亡くなった。心筋梗塞だった。38歳の若さである。もし、痛みを感じたときに救急に行っていれば助かった可能性は高かっただろう

これは 1 つの例に過ぎず、体の不調を訴えながらも、ウィルスを恐れ病院に行くことを躊躇して、別の理由で亡くなる人の数は確実に増えているらしい。だからこそ、公共広告が、「具合が悪くなったときは、病院に行くのが一番安全です」という広告を毎日のように流すようになったのだ。

実際のところ、ロックダウンが最も厳しかった3月4月のことを思い出すと、私自身も病院に行かなくてすむように神経質になっていた。たとえば、食中毒になって病院行きになったら大変だと、食料品の賞味期限や残り物の処理に通常以上に気を使っていたし、怪我をして病院に運ばれたらまずいと、リスクの高いアクティビティを避けていた。

しかし、ロックダウンの規制が徐々に緩和される中、血液検査などの定期検診をしないほうが疾患の予兆を見逃し危険なのではないかという風潮が広がり、血液検査にも行ったし、常備薬の処方箋を受け取りにいったりもした。

実際に行ってみれば、病院はさすがに予防のための対策が厳重で、入り口でサニタイザーで手を消毒、体温のチェック、進行方向の規制、床には2メートルおきの目安のマークがあって、ここまでやっているならそれほど心配することもないなと、安心させられるものがあった。

全員予約制で、予約するときにCovidののような症状であれば、通常の医者のオフィスには訪問しないようになっている。可能であれば、医者とネットミーティングで相談したり、重症じゃない限りは病院に行くよりも検査センターに行って感染検査をうけるように促される。重症であれば当然、専用のセンターに行くように促される。そのような体制を考えれば、一般の医者のオフィスは、食料品店と同じぐらいしか危険な要素はないと思っていい。

ロックダウンの最中、病院は危険なところではなくて、安心できる場所なのだと知っているのは大事なことだ。先程の例にあげた家族のように、病院にいるかいないかも定かではないウィルスのために、いたとしても感染予防をしっかりしている病院を必要以上に恐れるが故に、病院に行っていれば助かったであろう命を失うのは、あまりにも惜しい。

というわけで、体に異変を感じたら、いろいろ迷わず、難しく考えず病院に連絡し、支持に従って救急を訪れてほしい。医療関係者は、私達よりもはるかにウィルスのことを知っているし、感染の予防方法も知っている。そしてなによりも、命を奪うかもしれない急性疾患から人の命を救う方法を知っている。

ウィルスで奪われるよりも多くの命が、急性疾患で奪われているということにならないように、適正な線引をしてパンデミックを乗り越えよう。

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広がる感染と広がらない感染(ティア2)

今日もまた1人、ホワイトハウスの大統領補佐官の感染が発表された。報道によると、彼はホワイトハウスの感染が判明してから5日間自主隔離をして、毎日感染テストを受けていた。昨日までは毎日ネガティブだったのに、今日ポジティブがでたという。彼が自主隔離していたことを考慮し、その5日間は誰にも合わずに過ごしたと仮定すると、その5日の間、ウィルスは彼の体内に潜伏していたけどテスト結果はネガティブだったと考えられる。

これがこのウィルスの巧妙さで、彼は自主隔離をしていたので幸いだったのだが、感染テストが連日ネガティブだったら自主隔離をやめてしまう人もいるだろう。しかし、その5日の間も、ウィルスは潜伏していて感染を広める可能性があったのだ。

こんな調子で感染が広まっていくと、そのうちにワシントン DC の外にもクラスタが飛び出していきそうな気がする。実際に、スーパースプレッダーイベントであったと考えられている9月26日のホワイトハウスのイベントに参加したバージニア郊外の居住者は、大統領のニュースを見て感染テストを受けた結果、陽性が判明した。彼の妻も陽性だった。しかし、彼のところへホワイトハウスからのコンタクトトレースの連絡は未だにないという。

また、感染が判明した3人の議員たちも、感染が判明する前にワシントンからミネソタの自宅に飛行機で帰っている。ということはなんとミネソタにも、このクラスタは飛び火している可能性がある。

ホワイトハウスに出入りするジャーナリストの中にも感染が判明した人がいて、その家族にも感染者が出ている。しかし、彼らのところにもコンタクトトレースからの連絡は未だにない。コンタクトトレースがされていない場合、感染テストを受けるか受けないかは本人の判断次第という状況なので、感染している人がいても知らずにウィルスを広めている可能性がある。なぜ、ホワイトハウスは広範囲にコンタクトトレースをしないのだろう。

さらに、昨日も書いたように大勢のホワイトハウスのスタッフたちがいる。名もない彼らの感染はクラスタの一部としてレポートされることがない。また、彼らの家族や友人に知らないうちに感染している可能性がある。

実は今日のワシントンの感染者数は、6月以来最多だった。これがホワイトハウスのクラスタと関係あるかどうかは、コンタクトレースがちゃんと行われていない現状ではわからないれど、もしそうだとしても今の状況では驚く理由はない。

こうやって、ホワイトハウスを核にしてジワリジワリと広がっている感染なのだが、逆に予想に反してまったく広がっていかない感染についてのニュースを読んだ。

カリフォルニアの学校である。

インドの調査でわかったこと」に書いてように、子どもたちは、大人と同じだけ感染させる可能性があると判明してから、私はどちらかといえば学校の再開には積極的ではなかった。しかし、今日読んだ記事によると、もしかして学校は開けても大丈夫なのかもしれない。

カリフォルニアの田園部、農業地帯の郡の中には、もともと感染率が非常に低い郡があって、これらの郡では一ヶ月ほど前から段階的に学校が再開されていた。どれくらい感染率が低いのかと言うと、感染者は10万人につき1人以下という低さだ。その環境ならそうとうストレスなく暮らせるだろうと思う。

でも学校は別だ。学校はたくさんの子供達が集まって、笑ったり叫んだりする場所だ。そんな学校をパンデミック以前の状態に戻したら、子どもたちは、あっという間に感染媒体としての主役の地位を奪ってしまうだろう。そこで、学校再開のために、カリフォルニは州は非常に厳しいガイドラインを用意した。

教室に12人以上の生徒を入れない。マスク、ソーシャルディスタンス、手洗いは厳守。教室内は各机ごとにプラスチックのシールドが設置されている。もちろんこのガイドラインを守るには、以前と同じスケジュールの学校運営はできないので、生徒たちは、午前に登校し午後には家でオンラインスクール、またはその逆パターンで入れ替わって登校というスケジュールで学校に同じ時間に集まる生徒数を減らしている。

厳しいガイドラインに準拠する努力の成果なのだろうか。学校が再開してから1ヶ月たった今でも、感染者の数は増えていない。そこまで徹底してやれば、やはり感染は予防できるのだ。

これは本当に良いニュースで、現在感染率が下がってきているために、近日中に再開を目指している学校のよい手本になる。再開された学校は、パンデミック前の学校とはまったく違うものになってしまったけれど、それでもは他の子供達と一緒に学べることがとても嬉しいと子どもたちがコメントしていた。

こうやって、新しい普通の中で上手に感染をコントロールしながら、経済を開けていくのも、案外無理なことではないと思わせるニュースだった。

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